

1967年茨城県生まれ。医学ライター。医療関連編集者を経て、フリーランスライターとして独立。循環器、癌全般、消化器、泌尿器、皮膚科、眼科などの医学記事を執筆。海外取材も多い。
2004-04-05 号
高野 雅典(医学ライター)
心臓の筋肉(心筋)に酸素と栄養分を届ける冠動脈。その冠動脈が詰まってしまったときに行う手術は、この数十年間でどんどん進化している。
その代表とも言えるのが、カテーテル手術である。この方法は「手術」と呼べるほどの傷を体に残さないことが特徴だ。数ミリの細い管(カテーテル)を体内に挿入し、血管づたいに患部に到達させる。カテーテルというのは管状の器具の総称であって、実は色々な役割のカテーテルがある。詰まってしまった冠動脈を内側から押し広げるためのバルーン(小さな風船状の器具)が付いたカテーテルもあるし、それを患部まで送り届けるためのガイド用カテーテルもある。まだまだ色々な種類があるが、最近の進化としては、診断用カテーテルで超音波を使い血管内をサーチするためのものも登場している。
このような方法で冠動脈を治療する方法を、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と呼ぶ。「経皮的」という言葉は、胸部・胸腔を切り開かず、体表からアプローチして手術することを意味している。PCI用のカテーテルは、多くの場合、足の付け根あたりにある動脈から挿入する。手術後の患者さんを見ても、大きな手術跡はなく、心臓の手術を受けた人だとは信じられないくらいだ。
バルーンで血管を内側から押し広げるというのは、コロンブスの卵的な発想だったのではないか。それまでの冠動脈に対する手術は、バイパス術と呼ばれるものが中心で、患者自身の別の血管を冠動脈のそばに移植して、詰まってしまった部分の迂回路を作っていた。そのため、移植用の血管を切り取り、さらに心臓を露出させて手術を行う、大きな手術だった。現在でも、患者の状況によっては、この手術が行われているが、何といっても手術に伴う危険・患者の負担が少ないPCIが選択されることが増えてきている。
バルーンで、どのように血管を押し広げるのかは、以下の医療器具メーカーが提供してくれている患者さん向けのサイトが参考になるだろう。このなかで「手技の手順」というページを開くと、バルーン術(PTCA)などの手順をCGで解説してくれる。
狭心症・心筋梗塞の患者さんのためのPTCAハンドブック(http://www.getz.co.jp/general/PTCA/PTCA.html )
実は、バルーンを使って血管を拡張しても、しばらくすると再び血管が狭まってしまうことがある。それを防ぐために考案されたのが、STENT(ステント)と呼ばれる小さな器具である。これは金属で出来た網目状の筒であり、ちょうどマカロニのような形をしている。これをカテーテルで患部に送り届け、バルーンを使って押し広げて血管の内側に密着させる。そうすると、マカロニの内側の空洞部分を血液が流れるようになるというわけだ。ステントは、血管を再び狭まらせないようにするための支えの役割を果たし、そのまま血管内に残される。このプロセスも上記のサイトで解説されているので参考に見て欲しい。
ステントが登場したことで、PCIの威力はさらに高まった。そして、現在では、このステント自体にも様々な工夫が施されている。血管を押し広げた形状を維持しやすいように形状記憶合金を使ったり、ステントの内部にはみ出すように成長してくる血管内の細胞(目詰まりの原因となる)を抑制するように薬品をコーティングしたり、といった具合である。
次回は、今後の新しい治療法として期待されている遺伝子治療、細胞移植治療について述べようと思う。これらの治療は、最初の研究段階として、冠動脈の目詰まりによって血流が減ってしまった心筋組織に、新しい血管を再生させることが目標とされている。