

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2003-01-05 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
新年おめでとうございます。
2003年といえば、われわれ1950〜60年代に子ども時代を送った人間には鉄腕アトム誕生の年として認識されてきました。手塚治虫の名作漫画・アニメの主人公である百万馬力の夢のロボットであるアトムは、21世紀への希望の象徴でした。つまり、2003年には『鉄腕アトム』に描かれているようなすばらしい未来社会が実現すると、四、五十年前の子どもは信じていたのです。
ところが現実はこの通り。アトムのようなロボットは、間に合わなかったとはいえいずれ実際に登場するでしょうが、地球の現実は『アトム』の世界とはまるで違う。わたしたいのいる日本の社会は飽食を続けていますが、多くの地域では飢餓や貧困から抜け出せずにいます。
わたしの友人である毎日新聞外信部記者の城島徹さんは南アフリカ特派員としてアフリカ中南部から厳しい現実を温かい心でレポートしてくれていますが(毎日新聞の海外面には週に三、四回は彼の署名による質の高い記事が掲載されています。図書室や図書館で読んでみてください)、昨年末も「喜望峰の足元で」という連載コラムで差別、貧困、エイズ…
南アフリカの貧困層の過酷な生活を報じました。
科学が病気や貧困といった人間生活の苦痛を除去できないでいるばかりか、9.11のテロ、イスラエルとパレスチナの争いなど、差別や憎悪のような科学の力及ばぬ「心」=「文化」の問題も深刻になる一方です。「心」の問題は、『鉄腕アトム』の中でも、科学がどんなに発達しようと解決できないものとして物語のテーマにされていました。
これらの問題にどう対処していくか。今年にとどまらず、これから二十年、三十年かけて本気で取り組まなければならない課題です。環境問題や食糧問題(=人口問題)も、これからどんどん切実感を増すでしょう。
前回、大人も捨てたもんじゃないと書きましたが、未来の問題となるとやはり若いあなた方の力でなんとかしなければならない。もちろんわたしたち大人も手をこまねいているわけにはいきません。あなた方がそうした力を発揮できるように手助けする役割を果たしたいものです。