

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-12-22 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
学力低下!
またまた大きな見出しが新聞紙面に踊ります。文部科学省が行った学力テストの結果が、理科が下がったの国語が上がったの、数学が下がったのと、けたたましい限りです。落ち着いてね、マスコミの皆さん。
だって今回のテストは、過去と比べるために実施したのではないからです。今年四月からの新学習指導要領に対して、こんな指導要領では子どもたちの学力が下がるぞ!
との批判が出てきたから、ほんとに下がるのかどうかきちんとデータで測って議論しましょうということになった。その「使用前」のデータとして、新指導要領全面実施直前の今年二月にテストをしてみたわけです。で、これからの「使用後」と比べるのが目的。
それなのに、無理矢理過去と比べてしまう。まあ、そうでもしなきゃ記事になりにくいのはわかるし、そんなマスコミに親切に配慮して一部過去との比較データを実施者側が示したのも、過去との比較を望む一部の声に応えたものではあります。だから過去と比較するなとは言わないけれど、本質は「未来との比較」のためのテストであることを忘れてほしくありません。
また、テストの結果だけで「学力」全体を評価するのが間違っていること、つまりテストの結果だけが学力ではないというのをお忘れなく。テストはたしかに、ある部分の学力を測る手段ですが、学力総体を見られるわけではありません。テスト結果に注目するのは結構ですが、テストで測れない部分を見るのもたいせつなことです。
祥豊小学校の子どもたちがバリアフリーを考える過程で自ら気づいた重大なことは、目の不自由な人のためには歩道の点字ブロックが役に立つけれど車椅子の人にとっては迷惑だという事実。これをジレンマというのですが、ジレンマに気づき、それを解決するためにどうしたらいいかを自分たちの課題に位置づける小学五年生がこれまでどれだけいたことか。彼らの「学力」はすばらしいと思います。
年末にもらった手紙では、子どもたちは今、漢字練習に大熱中しているそうです。点字や手話をおぼえて、今度は漢字をたくさん知ろうと思ったようです。きっとテストで測る学力の方もきちんと身に付くだろうなあ。