

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-12-15 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
距離もバリアだ、と言うと子どもたちは一瞬驚いたようですが、すぐに納得。そうですよね。足の不自由な人に階段の一段が大きなバリアとなるのは、それを乗り越えるのにたいへんな労力と時間を要するからです。ある意味同じように、東京から京都までの500km余りにも及ぶ距離を越えるには、それなりの労力と時間が要ります。階段にリフトとそれを使う時間が必要なように、東京・京都間の距離には新幹線と2時間以上の時間がかかるわけです。
もちろん、わたしは何かが不自由な立場ではないけれど、バリアを乗り越えなければならないことでは同じです。つまり、バリアは「○○が不自由な人」にだけ存在するのではありません。では、自分がバリアに直面したとして、それを乗り越える動機は何でしょうか。
わたしが祥豊小学校まで来て授業をする理由は、「あなたたちと話し合いたいからです。顔を見たいし、一緒に歌も歌いたいし…
難しい言葉で言うとコミュニケーションをとりたいということ。つまり、会いたいから遠い距離を越えて来るのです」。なるほど、と子どもたちはわかってくれたようです。
あなたたちがバリアフリーにしたいと思うのだって、目や身体の不自由な人たちが不自由なく活動できることで、その人たちと会ったり、話したり、一緒に何かをしたりできるようになりたいからじゃないのかな?
考えてみてごらん。
この問いに、子どもたちは一ヶ月後、みごとな答を出してくれました。
ぼくたち、わたしたちは、誰とでもコミュニケーションをとりたいから、つまり自分のためにバリアフリーに取り組むんだ、と。
そうだよね。みんなが「自分のために」バリアフリーに取り組むとすれば、この世の中にあるさまざまなバリアを全部なくしていくという大きな事業も決して無理ではないと思います。年末年始にお勧めの映画を。たまたま二本ともバリアとバリアフリーの問題を取り扱っていますが、堅苦しい話じゃありません。『AIKI』は、事故で半身不随になった若者が合気道に出会って自分を取り戻していく痛快な娯楽映画です。『仔犬ダンの物語』は、モーニング娘。とそれに続く少女たちを中心にしたアイドル映画ですが、眼の見えない仔犬を拾った小学生たちの物語。どちらも、ぜひ観てほしいし、描かれていることについて考えてほしいと思います。