

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-10-13 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
というのも、実はわたし自身が総合学科という新タイプの学校を生み出す担当者だったからです。しかもわたしにとって、今までで最も印象に残る、またそれに携わったことを最も誇りに思える仕事であり、とりわけ熱をもって語りたくなります。
もちろん、この高校を作る決定をしたのがわたしだというわけではありません。中央教育審議会という教育政策を提言する権威ある審議会に集まった教育の専門家や社会を代表する知識人の方々が、議論を尽くして教育改革の方向性を打ち出す。それを、できるだけ忠実に具体化するのが、われわれ役人の仕事です。
今回の(マスコミ命名によれば)「ゆとり教育」と呼ばれる改革もそうですが、一部に起こる反対論や国民の皆さんの不安、さらには利権のために走る「抵抗勢力」の存在、それらをしのぎながら、現実に即した形で政策を実現していくのです。わたしに言わせれば、これが役人の「お仕事」でいちばんやりがいのある部分ですね。
総合学科のときは、なんと一番の「抵抗勢力」は中学や高校の先生たちでした。生徒のカリキュラムは選ばせたりするんじゃなくて学校側が全部決めてやらなくてはいけない…、生徒なんかに選ばせたらデタラメな選択をしたり楽をしたがったりするに決まっている…、挙げ句の果ては、自由に選ばせたりすると規律が乱れて生徒指導上の大問題になる(!)なんていうトンデモ理論まで登場する有様。中央教育審議会の議論に耳を貸そうともしない。ま、それもそうですよね。このコラムの初めの頃に書いたように、法律に書いてあることでも平気で破って体罰を当然視する教師が少なくないのですから。
それら「抵抗勢力」と半年近くも闘って、なんとか審議会の答申に沿ったものを現実化できたときには、ほんとうにうれしかった。中央教育審議会の中でこの問題を中心的に議論した学校教育小委員会の座長をつとめられた教育学者の河野重男先生が、突然わたしの課(当時は初等中等教育局職業教育課)に訪ねて来られ、わたしの手を取って「よく答申の通りにやってくれた!」と激励してくださり、恐縮したことを、今でも鮮明に覚えています。
【それほどに、「抵抗勢力」はやっかいな存在です。今のさまざまな改革について見ていてもわかると思いますが】