

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-09-22 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
生活習慣病予防の話に熱が入ってしまって、教育の話題からちょっと離れがちになりましたが、今回は教師について。
わたしのような年齢になると、学生の頃と違って自分にとって先生に当たる人と接する機会はめっきり減りますが、数少ない例として、お医者さんにかかる場合があります。患者であるわたしは、お医者さんを「先生」と呼ぶし、そういう力関係でつきあいますよね。
だから、わたしが生徒、お医者さんが教師だと考えてみると、「先生」と自分との関係が一種見えてくるものがあります。実は、何回か続けて力説してきた健康保険や生活習慣病の話は、わたしという「生徒」が主治医である「先生」の影響を強く受けて考えたことなのです。いい教師は自然と生徒に影響を与えますが、これはその好例。わたしの健康と社会全体の関係という広い問題に目を向けてくれたので、健康を大切にする気持になった。
大人のわたしが健康を守る努力を、子どもが勉強する努力に置き換えると、これはいわば、ただ勉強しなさいと命令するのではなく、何故勉強する必要があるのか、その結果は社会とどうつながっていくのかを示してくれつつ勉強への意欲をかき立てるようなものです。とにかく勉強しろ!
と言われるのがイヤなのと同じく、とにかく健康に気をつけなさいと命令されてもなかなかそうしようとは思えませんものね。教師たちも、わたしの主治医のように話をもっていってくれると、生徒は自発的に勉強する方向へ行くと思うのですが。
わたしに節酒を決意させた誘導のしかたも巧妙でした。検査の数値はトンデモナイ結果で、酒を控えなさい!
といきなり言われて当然の代物なのですが、そうしない。まず、悪くない酒関連以外の数値をほめてくれます。「ここらへんの数値はいいですよ。もともと性能のいい身体なんですね。遺伝子をくれた両親に感謝しなければ…」などと十分おだててくれた後で、酒のせいで悪くなっている数値さえ改善すればすばらしい状態なのにねぇ、と言われれば、じゃあ頑張ってみようかとなるじゃありませんか。
こうして、不良中年は摂生する決心をするのです。頭ごなしに悪いところを指摘するのでなく、いいところをほめておいてから本題を切り出すやり方、教師にもそうあってほしいものだと考えさせられた次第です。