

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-09-08 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
国民全員が病気やケガをしないようにする、というのはたしかに事実上不可能です。生まれつき先天性の重い病気を負っている子どももいれば、台風や地震、火山爆発といった天災に遭遇してケガをすることもある。そんな場合にまで、病気やケガのせいで国民の「みんなのお金」である健康保険が使われて困ると言われては、当事者はたまらない。
だから、理想へ近づく最初の一歩としては、まず、自分の責任でない不可抗力で病気やケガをする場合を別にして考えてみたいのです。つまり、自分でちゃんと注意していれば病気にかからないですんだりケガを回避できたりする部分について、ということになります。これを減らす、そしてできれば無くすというのならば、決して不可能ではない。そのことに皆で挑戦してみようじゃないか、と呼びかけたいのです。
医療費を全額自分で払わなければならないとしたら、気軽に病気やケガはできません。健康保険制度がなかった頃は、少々の病気やケガでは医者にかかれなかったという話を昔の人から聞いたものです。今でも、たとえばホームレスの人たちは保険に入っていないので、高額な医療費を払えないから医者にかかれない。そのために病気は即、死につながることにさえなります。風邪ひとつだって、それが肺炎にまで進めば命を失う結果となりかねません。それゆえ、ホームレスの人々は、健康に非常に気をつかうという話もあります。
それに比べると、健康保険に守られているわたしたちは鈍感です。風邪をひけば病院に行って注射を打ってもらったり薬をもらえばいい、と高をくくってしまう。でも、その裏では風邪をひかなければかからなかったはずの医療費が確実に消費されているのです。
で、言いたい。自分の注意で回避できる病気やケガは、なくしていくよう努力しようじゃないですか。その最たるものが生活習慣病です。日常の生活習慣がよくないために、高血圧、糖尿病、痛風、肝臓病、ガン、脳卒中…さまざまな病気を引き起こしてしまう。若い自分たちには関係ない、と思っている場合じゃありませんよ。たしかにこれらは、ついこの間まで「成人病」と呼ばれていて大人の病気だったのですが、今や子どもたちの中にも高血圧や糖尿病が広がりつつある、というので「生活習慣病」と改められたのです。これを撲滅するだけでも、国民全体の医療費は大助かり。そのぶんを、自分では避けられない難病や奇病に苦しむ人たちの治療に十分ふりむけられるではありませんか。