

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-09-01 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
国民の医療費は、健康保険という「みんなのお金」によって主たる部分がまかなわれているという仕組み、おわかりいただけたでしょうか。
ということは、病気の人が多くなると「みんなのお金」を総額としてたくさん使わざるを得なくなります。その場合、積み立てた「みんなのお金」が減ってしまうわけですから、全体で考えると困ったことになってしまいます。
実は、その「困ったこと」状態はどんどん進行しているのです。国民全体の医療費は、年々増えるばかり。このままでは健康保険の会計が破綻してしまいます。今や、健康保険会計が負担する割合を減らさなければいけない羽目になりかかっている有様です。
現在、厚生労働省が提案している法律改正案だと、わたしのような加入者本人は8割を保険で払ってもらっていたのが、家族と同率の7割になってしまいます。また、今までは70歳以上の高齢者の場合一律に9割を保険で負担していたのが、ある程度所得のある高齢者に関しては8割になる。すなわち、1000円かかったとすると、わたしは今なら200円なのが300円に、所得のある高齢者は100円だったのが200円になるのです。
たった100円のことじゃないか、ではありません。これはあくまで例えであって、現実の医療費は何十万、何百万かかることだって珍しくないのです。手術したり入院したりして百万円かかったとすると、十万円の違いになる勘定です。病気やケガで苦しむ上に、治療費用で追いつめられる結果になりかねません。しかも、今度の改正案で全部が解決するわけではない。このまま国民全体の医療費が増え続ければ、事態はもっと悪くなっていく。
だから、この問題を抜本的に解決するためには、国民全体の病気やケガを少なくすることが必要なのです。みんなが病気になったりケガをしたりしないようにする。すばらしい目標ですよね。誰も反対する人はいないでしょう。でも、誰も反対しないことというのは、実現するのがとても難しいことでもある。たとえば、全員がお金持ちになれるようにする、とか、全員が幸福になれるようにする、とかね。
しかしそれはあくまで「難しい」のであって、最初から不可能に決まっているわけではない。少なくとも、理想へ近づいていくことはできるはずだ。そういう思いで、この問題をもうちょっと考えてみたいと思います。