

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-07-28 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
「しゃべり場」の話をもう少ししたいのですが、その前に、この夏休みお薦めしたい映画について、今回は触れさせてください。それほどに、今年の夏は観てほしい日本映画が目白押しなのです。
まずは何といっても『ピンポン』ですね。人気スター窪塚洋介の主演で大ヒットしそうですからご存知の方も多いと思いますが、これは掛け値なしの傑作青春映画。卓球というマイナー視されがちなスポーツが、実に魅力的に描かれ、それに打ち込む個性あふれる少年たちが躍動しています。迫力あるCG映像が話題になっていますが、それよりも少年たちのライバル意識と友情の交錯がナイーヴに伝わってくるところに見どころがあると思います。
次にお薦めは、『ドッジGO!GO!』。子ども向け映画だなんてバカにしないで観てほしいと思います。ピンポンに対して、こちらはドッジボールですが、競技ドッジボールの常勝チームにつぶれかかった弱小チームの子どもたちが挑む、そのチャレンジ・スピリットが観る者を熱くします。弱小チームの助っ人になってくれるのは韓国の子どもたち、そう、ワールドカップを思い出させてくれる日韓の絆を描いた映画でもあります。言葉が十分通じなくても仲良くなった両国の子どもが合同チームで強敵に立ち向かう。コメディ調の明るさがある快作です。
『森の学校』は、むしろ皆さんを取り巻く大人たち、親や教師に観てほしい映画です。昭和初期の田舎町に暮らす五人兄弟と、その両親、教師、地域社会の人たちの姿が、その時代にタイムスリップしたような鮮明感で伝わってきます。やれ学力低下だ、キレる十代だ、学級崩壊だと大人が子どもを否定的に見たがる現在とは違い、子どもは大人を、大人は子どもを信頼し尊重しあいながら暮らしていた時代のことを、思い出させてくれます。そんな時代が過去のユートピアみたいに感じられるほど殺伐としてきたのは、子どもが変わったのでなく大人の方が変わり果ててしまったのだと、改めて感じました。
『ぴぐれっと』は、劇映画でなくドキュメンタリー映画ですが、人間ってすばらしいなぁという気持にさせてくれる一編です。知的障害を持ちながら社会の一員として自立しようとする若者たちと、そのサポートをつとめる若者たちの姿が、美化したりせずに等身大の形で映し出されます。人間好きな人は必見。