

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-07-07 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
【授業模様—みんなの目がテン】
寺脇:今日はみなさんと一緒に勉強できるのを楽しみにやってきました。よろしくお願いします。ここに日本地図がありますね。京都府庁の仕事はこの京都全体です。私の仕事は日本全体を対象にして働いています。これを国の仕事といいます。国の仕事は,私が誰の指示に従って仕事をしているかというと,内閣総理大臣です。東京には日本の政府があります。その政府の中に,どんな省があるか知っている人はいますか。
児童:ノーベル賞です。
寺脇:おー,ノーベル省という省があればいいですね。ノーベル賞は賞状をもらう賞ですよね。そういう賞もあるんだけど,『省』(黒板に書く)という字を見たことがありますか。こういう省の字がつくものを考えてください。
児童:外務省があります。
児童:文部省です。
寺脇:良い例を言ってくれたね。この間まで文部省だったけど,今は文部科学省です。文部省と科学技術庁が一緒になりました。だから君のいったノーベル賞(省?)と近いよね。ノーベル賞というのは化学の賞,あるいは物理学,文学とか色々ありますね。ノーベル賞については,私が勤めている文部科学省の仕事にも関係しています。それに,みんなの使っている教科書をどんな教科書にするのかを決めることや,ほかにも,みんな,今年度から毎週土曜日がお休みになりましたね。土曜日を休みにするかしないかを決めたり,これから学校でどんな勉強をするのかを考えるのも私たちの仕事です。『総合』っていう授業をやることも私たちが決めたんです。どう思う?びっくりした?
児童:はい(児童一同で)。
寺脇:国の仕事は,すごく大きな仕事ですね。でも,これから地域について勉強していくと,日本全体とみんなとがつながっていることがわかってもらえると思うよ。
《5年生といっても,ついこの間までは4年生。ものの見方や考え方がいつも自分中心で,生活環境は,家族・近所・友達と限られている。京都のことは社会科で習ったけれど,実感としては捉えてはいない。その子どもたちが,「国の仕事」などと言われるものだから,もうびっくり。日本という国のことは知っているけれど,その国の仕事をしている人が,今,目の前にいる。自分に勉強を教えてくれている,子どもたちの目がテンになっていた。それでいて,いつもの何倍も興味と吸収力がアップしているようだ。》
【授業模様—目からウロコ】
寺脇:地域って何だと思いますか。地域という言葉を二つの字に分けて考えるとどんな熟語になるかな。
児童:地面です。
児童:地球です。
寺脇:「域」という字はどう?難しいかな。「域」という字も左側に土があるよね。域っていうのはどこからどこまでという境界を意味するんです。何を連想しますか。
児童:校区という地域だと思います。
児童:こっちが京都市で,そこから大阪府です(地図を示しながら)。
児童:日本と外国です。
寺脇:大きいのがでたね。さっき国の仕事の話をしたときに,すごく大きなことと思ったかもしれないけど,国も一つの地域なんです。地域っていうのはいろんな形があるんですよ。じゃあ小さな地域の考え方をみてみようか。この祥豊小学校区がどういう所になったら良い地域になると思いますか。
児童:交通が便利な地域だったらいいです。
児童:身体の不自由な人が便利で暮らせる所です。
児童:事故がないような平和な地域です。
児童:もっと空気がきれいだったらいいです。
児童:みんなが優しい心を持っていたらいいと思います。
寺脇:ゴミが落ちていない,落書きがないというのはどうだろう。
児童:賛成(児童一同で)
寺脇:じゃあ,もっと小さな地域のこの教室をどう考えたらいいでしょうか。この教室の中は5年2組です,ということは,ここも一つの地域だよね。例えば,目の前にある机をきれいにしておくのは,誰が責任を持ってするの。
児童:自分の机は自分で管理して,きれいにしておいたらいいと思います。
寺脇:今自分のという言葉が出ましたね。自分っていうのは考えてみると,一番小さな地域なんですね。自分より小さな地域ってないよね。この机はあなた自身で責任を持つ。じゃあもうちょっと大きな地域,この5年2組の教室をきれいにするのは誰の責任ですか。
児童:この組,全員だと思います。
寺脇:全員という言葉が出ました。全員と一員。全員というのは,ここにいる29人全員のこと,その中で自分のことを一員というんですね。みんなは5年2組の一員として,この教室をきれいなところにしようとか,考えるよね。学校全体をきれいにする責任は今度は誰が持つ?この学校の全員とは誰のこと?
《子どもたちにとって,地域は自分が住んでいるところ,つまり自分の家を中心とした町のことだ。「地域」と聞かれた時に,当然「町」と思うのは無理のないこと。「地域」をいろんな区切り方で考えるという発想は,子どもにとって,まさに目からウロコ。今まで,校区や町内しかイメージしていなかったのに,「自分の机」が一番小さな地域と聞いた。へえ,そうなんだ…そして,教室・学校・校区へと広がっていく。この小さな地域は,自分で責任を持つということを教えてもらった。教室をきれいにするのは,一人一人の責任。みんなが気持ちよく生活するために,一員としての責任があること。29人全員の一人一人が一員なのだ。》
●7月13日土曜21:00より NHK教育テレビ「10代真剣しゃべり場」に出演しています。
「何のために勉強するのか?」というテーマ(NHK側から与えられたもの)について、十代のメンバーと激論(?)をたたかわせています(既に収録済み)。その印象や、終えての感想は、放映後にということで、とりあえずは、番組をごらんになっていただけないでしょうか。
わたし自身、まだ、どんな形に編集されて放映されるか知りません。NHKのねらいは大人と十代の勝負のようで、「道場破り」とかBATTLEとか勇ましい文句で飾られているのですが、その意味でいえばおそらくわたしの完敗。こてんぱんにやられている図が繰り広げられるのではないかと思います。おたのしみに。