

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2002-03-24 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
いよいよ4月から始まる小中学校の新しい教育システムについて、そんな改革は必要ないとか、学力が低下するとかの反対論が喧伝されていますが、8年前、家庭科の男女必履修を実施するに当たっても同じように反対騒動がありました。
ひとつは、家庭科は女子だけがやっていればいいのであって男子は料理や裁縫などしなくていい!
という時代錯誤の馬鹿馬鹿しい反発です。もちろん、そんなことを言うのはオジサン連中に決まっている。高校の校長はほとんど男性でありオジサンですから、男子が家庭科をやる必要性をなかなか理解できません。校長会の集まりなどでわたしが家庭科の話をすると、いかにも不服そうな顔をしている人が大半でした。
「この中で、今しているネクタイを今朝自分で選んだ人、手をあげてください」と聞くと、不思議そうな表情。で、1割くらいがやっと手をあげる。「じゃあ、そのネクタイを自分で買いに行って店で選んだ人は?」というと全く反応ありません。「情けなくありませんか、なんでも妻任せで。自分の着るものを自分で選ぶのは人間として基本だし、それよりなにより、自分の生きがいのひとつでしょう。心豊かに生きられないでさびしい思いをするのはあなた方自身ですよ」 と言うと、けっこう思い当たるところもあるのか、校長たちも動揺します。そこですかさず、「子どもたちを、そんな情けない中高年にしないためにこそ、生活の基本である家庭科が必要なのです」と畳みかけていきました。
家庭科で学ぶのは、料理、裁縫、洗濯といった個々の技術だけではありません。食べること、着ること、住まうことに対する基本的な考え方をきちんと持つ。さらには家族のありかた、育児や福祉介護等々、生活のあらゆる場面にかかわるものを対象にしています。
そもそも、どの教科を取り入れるかというときに将来どれだけ役に立つかを基準にするのなら、数学なんかのほうがよっぽど怪しくなるんじゃないでしょうか。だから数学をやらなくていい、なんてわたしは決して言いませんが、家庭科を必ずやったほうがいい理由なら百でも二百でも並べることができます。だって、人間が生きていくすべてに直接結びついている学習なんですから。
むしろ、これを過去には女子しかやっていなかったことの方が、とんでもない話だったと思うのです。