

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2001-12-16 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
江戸川区立二之江中学校へ行った話の続き。
わたしの話を聞きに集まってくださったのは、主に地域住民や保護者の皆さんでした。この学校には、PTAのほかに、親以外の地域の人たちも参加する協議会があり、さらには「二之江中学校を愛し育てる会」という地域の方々による応援団まで存在します。要は、子どもたちのことを学校任せにするのでなく、地域の皆で協力して見守っていこうというのです。
うっとうしい?
巡回補導なんかして常に見張るというのだったらそうかもしれませんが、もっとゆるやかに、でもちゃんと見ているよ、なのです。具体的には、やはり『三年B組』を見てもらえばいいのですが…。あの中で町内会の皆さんやお年寄りがPTAと一緒になって桜中学校の生徒たちとかかわっていく、あるいはお巡りさん、商店のおばちゃんたちがすれちがう子どもたちに挨拶する、そんな場面と重ね合わせてイメージしてください。
わたしが気になるのは、大人たちは「今どきの子どもは…」と悪口ばかり言い、その結果子どもの側は大人に対して警戒心や不信感をつのらせるという傾向です。そんな社会に暮らすのは、わたしは嫌だ。相互信頼があった上で、注意するべきところがあれば注意し、直すべきところがあれば直せばいい。一方的にあいつはダメだと決めつけるところからは何も生まれないと思うのです。
二之江中学校の校舎へ入ったとき、たまたま、二人の女生徒が何か布のようなものを広げて話しているのを目にしました。「こんにちわ」と声をかけると、「こんにちわ!」。元気に挨拶を返してくれる。近視のわたしはよく見えないので「それは何?」と聞くと「マフラーです」との答え。それに加えて「お母さんが編んでくれたんです」と。
このひとことで、彼女を取り巻く家庭、地域社会、学校の姿がわかります。マフラーを編んでくれるお母さんもすばらしいけれど、そのことを知らないおじさんにも自慢できるような人間関係の温かみが、周囲の地域社会にあるのです。
こんな社会を、あちこちに作っていきたいと願います。