

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2001-07-01 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
政治家がなんとか言ってるけど、結局のところ国を動かしてるのは官僚だと思うんですよ。だからボクは官僚になってこの国をどう動かすかという仕事がしたい。…誰のセリフだと思いますか?
寺脇が学生の頃考えたことだろう、と思われそうですね。わたしの初心はそうじゃない。「国を動かせるから」ではなくて、「みんなの役に立てるから」でした。庄司薫という小説家がいて(最近は文筆活動をしていませんけれど、わたしが高校・大学時代の人気作家でした)、この人の作品を読んでいくうちに公務員という仕事を選ぶ気持になりました。『赤頭巾ちゃん気をつけて』『白鳥の歌なんか聞こえない』『ぼくの大好きな青髭』『さよなら怪傑黒頭巾』と続く青春小説シリーズ4部作。時代が経っているのでピンとこないところもあるかもしれませんが、今でも中公文庫で出ているはずですから、興味があれば一読をお勧めします。主人公・薫クンは、大学進学を前にこれからの生き方についていろいろ考える。自分は何を学ぶのか、どういう仕事をするのか、と。それに読者としてつきあっていくうちに、わたし自身も考えるようになり、自分にできる「みんなの役に立つ仕事」とは何かを真剣に模索しました。映画監督?
学者?
ジャーナリスト?
教師?
大学で法律や政治や行政を学ぶにつれ、役人という仕事で「みんなの役に立つ」のが向いているように考えたのです。じゃあ冒頭の発言は?
なんと、今の高校1年生。東京で「私学御三家」などと呼ばれている中高一貫教育の学校に通う生徒の言葉なんです。先日わたしがTV朝日「たけしのTVタックル」に出演したとき、スタジオに招かれていた高校生たちのひとりが、将来の希望を問われてこう答えました。なんて古臭い!
10年前ならいざ知らず、小泉内閣や田中知事が出現する今どき、まだこんな官僚万能思想が、しかも10代の若者にあるなんて。愕然としてしまいます。国を動かすのは政治家。そしてその政治家を選ぶ国民に決まってるじゃないですか。この話、次回ももう少し続けましょう。PS. 東京地区ではシネセゾン渋谷劇場で7月6日までの上映ですが、富樫森監督『非バランス』という青春映画が傑作です。間に合えばぜひ一見を。