

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2001-06-10 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
文部科学省は、結構忙しい職場です。公務員は朝9時から夕方5時までの優雅な仕事と思われているようですが、少なくとも霞ヶ関にある中央省庁は違う。夜遅く霞ヶ関界隈を通ると、どのビルも不夜城のように明かりがついているのが見えます。日本全国、場合によっては海外も含め時々刻々と動く事態に対応するには、どうしてもそうなってしまうのです。特に若い職員はたいへん。国会開会中など連日終電で帰るような状態です。
そこで、たまには息抜きをするためのレクリエーション・クラブがある。そのひとつとして、月一度映画を観に行くクラブ「十九時会」(残業をしないで午後7時には映画館へ集合)があります。映画なんか職場のメンバーで行かずに友達や恋人と行けばいいじゃないか、とお思いでしょう。もちろん休日の場合はそうなのでしょうが、忙しい仕事から思い切ってスパッと離脱するためには職場グループの役割も大きいのです。したがって若い職員ばかりなのですが、わたしが映画の評論を書いているということで、「顧問」として参加することになりました。
会員のリクエストで選ばれた今月の鑑賞作品が、『JSA』というわけなのです。わたしは日頃日本映画しか観ないので、けっこう新鮮な体験。でも、この映画は観たいと思っていた。現在の韓国の状況、ことに北朝鮮との関係をリアルに感じさせてくれるのではないかというのが理由です。
結果は期待以上でした。親兄弟であっても生き別れになる過酷さで国が二つに分断されているというのはどういうことか、頭で考えたり想像したりするのとは違い、現実にそこに立ち会っているかのような臨場感で受け止めさせてくれます。南北分断という厳しい現実を前に北と南の若い兵士たちは何を考えどう行動したか、美しく、しかし残酷な人間ドラマが繰り広げられます。
だから平和な日本の若者はダメなんだ… なんて言う気は全くありません。それぞれの国にはそれぞれの状況があり、その中で真剣に生きればいいのですから。ただ、お隣の国の若者たちがどんな思いで日々を送っているか知るのは、とても大事なことだと思うのです。その意味で、皆さんにもぜひ観てほしい映画です。