

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2001-05-13 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
さて、当分はわたしの自己紹介です。前回お約束した通り、最近わたしが熱中しているマンガをいくつか紹介しましょう。
まずあげたいのは、「ヤングサンデー」誌連載中の『海猿』(佐藤秀峰)です。主人公・仙崎大輔は、高校卒業後、海上保安庁に入り海上保安官として働いています。この職種がマンガの題材に使われるのは、きわめて珍しい。地味で知られるところ少ない仕事ですが、実際は警察官と同じくらい重要な役割を担っています。見落としてしまいがちかもしれないけれど、高校生の皆さんも将来の進路のひとつとして考えてみてもいいのではないでしょうか。
おっと、つい「進路指導」みたいな固い話になっちゃった。なにも、進路を考える教材マンガとして推薦しようというのではありません。作品としてとてもすぐれていると思うのです。高校を出て消防士になった青年・大吾を主人公にした「少年サンデー」の『め組の大吾』(曾田正人)にも夢中になりましたが、あちらが少年向きとすればこちらはちょっと大人っぽい展開。主筋は海上保安官の職務にありますが、新聞社の地方支局に配属された若い女性記者とのかなり重たい恋愛が密接にかかわってきます。
遭遇する事件の深刻さも、半端じゃない。単なる海難事故だけではなく、日本海に不審船が侵入してくるという現実にも起こった緊迫の事態が扱われた際は、武力を行使するかどうかという瀬戸際の状況で、殺すか殺されるかの深刻な悩みに直面します。あるいは、インドネシア近海の海賊対策に国際協力チームとして出動し、険しい現実にうちのめされる。現在進行中のエピソードでは、ジャンボ機が操縦不能になり海面に夜間強行着水する中で失われる命と救われる命が交錯します。
これらを通して、生命や愛の重みが骨太に提示されていきます。公務員の在り方、マスコミの役割、国際緊張関係、アジアのボーダレス化といった今日的問題もくっきり浮き出てきて、今のわたしたちの社会のあるべき姿まで考えさせてくれる。とはいえ、難しい論文ではなくておもしろいストーリーになっていますから、とっつきにくいなんてことはありあません。ぜひ一度読んでみてほしいし、感想や意見があったら送ってほしいと思います。来週もこの続きを。