

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2010-08-28 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
マスコミは連日、民主党代表選挙のニュースばかりです。たしかに首相を決めることになる選挙なのですから、大きい扱いをするのは当然ではあります。問題は、その扱い方です。菅首相陣営と小沢前幹事長陣営の批判合戦を面白おかしく紹介したり、どちらに何票入りそうかの予想をあれこれしてみたり、まるで興味本位でしかありません。
重要なのは、菅首相の政策と小沢前幹事長の政策がどう違うのか、このコラムでも前回書いた外交についての考え方がどう違うのか、二人がそれぞれこの社会をどういうものにしていこうと考えているのか… などの、中身の報道でしょう。
もっと具体的には、二人が日本経済の現状をどう見ているのか、とか、「新しい公共」や東アジア共同体構想をどれくらい熱心に実現しようとしているのか。菅さんが首相だと、アメリカ、中国、韓国、北朝鮮、ロシアといった日本と密接な立場にある国々との関係はそれぞれどうなるのか、小沢さんの場合はどうなのか。
わたしたちが知りたいことはたくさんあります。にもかかわらず、そうしたことが真剣に取り上げられる様子はありません。二人がまだ正式に立候補していなくて公約を公表しないからまだわからない、ですって? それをこそ予想し、多面的に取材し、国民に知らせていくのがマスコミの仕事ではないでしょうか。
今回の代表選挙など、マスコミが煽って両者の対決を作り上げた部分もあります。たとえば、8月19日の軽井沢・鳩山別荘での鳩山前首相主催のパーティーに小沢さんが出席したときなど、まるで小沢さんと鳩山さんの連合軍が出来上がったかのような報道ぶりでした。
実はわたしはあの場にいました。パーティーに先立って行われた議員たちの研修会で「新しい公共」について話をする役目だったからです。わたしの目から見て、あの時点では連合軍なんていう状態ではありませんでした。はっきり言って、議員たちが陽気に飲み食いするにぎやかなパーティーにしか見えませんでした。
ところがものすごい数の報道陣が詰めかけ、その夜から翌日にかけてのテレビや新聞では大げさな報道が氾濫しました。そういう煽り立てに引きずられるように、その後1週間で菅対小沢の対立構造が作り上げられていきました。これは、マスコミの「やり過ぎ」としか思えません。
高校生の皆さんは、賢いマスコミ報道の受け止め方をするにはどうしたらいいか、考えてみてください。わたしもこのコラムで、そのことを書き続けたいと思います。
次回は、マスコミ報道を賢く受け止めるやり方(これを「メディア・リテラシー」と言います)の例をいくつかご紹介しましょう。