

京都造形芸術大学教授。映画評論家。NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター。「『子どものため』は大人の身勝手。子どもは人質ではない。いますぐできる『学校を楽しくする方法』を教えます」と、文部官僚時代より教育問題に刺激的・積極的に発言する。2006年11月文部科学省を退職。
2010-03-06 号
寺脇 研(NPO教育支援協会チーフ・コーディネーター)
高校生の皆さんは、4月から高校授業料無償化が始まるのを知っていますか?
これは、「コンクリートから人へ」をスローガンにした鳩山政権の目玉政策です。ダムや高速道路建設といったコンクリートを使った公共事業に税金を使うのでなく、子育て、教育、福祉、医療、介護など人間に関することに使うようにしていこうという大きな方針転換と言ってもいいでしょう。
子ども手当は大きな話題になってきたので、皆さんもご存知でしょう。15歳までの子どもを持つ親に、毎月子ども1人当たり1万3千円を給付する制度です。中学生くらいになると給付額を自分のお小遣いにしたいと思うかもしれませんが、これはあくまで親が子どものために使うことを前提にしています。
親の皆さんには、自分たちのためでなく子どものために使うようお願いしていますが、子どものためにどう使うかは親の知恵や愛情の見せどころでしょう。無条件にお小遣いにはしてくれなくても、本代、映画代、コンサートやお芝居の料金、スポーツをやったり見たりするための費用、旅行や自然活動などの体験にかかる費用… さまざまな使途が考えられます。また、親と子がそれらを一緒になって考えるのもいいでしょう。
さて、高校生の授業料無償化は次のような仕組みによって行われます。国公立高校の場合は授業料を徴収しません。私立高校の場合は全額免除ではないものの親の収入に応じて親に対し毎月1万円から2万円の修学支援金を給付することで負担軽減されることになっています。これは、高校生だけでなく高校相当の各種学校生徒にも適用されます。
ここで注意してほしいのは、誰の授業料が無償になるのかという点です。そう、高校あるいは各種学校の生徒である皆さんの授業料ですよね。つまり、皆さんが高校や各種学校で学ぶ権利(これを「学習権」と言います)を保障するための政策なのです。
子ども手当は、子育てをする親に対して税金が支出され、使途も親に任されます。しかし、高校授業料無償化に支出される税金は生徒の皆さんが学校で学習するためにしか使われません。これは、生徒に学習権を保障する制度です。
だからこそ、通学する学校が高校か各種学校か、日本の学校か外国人学校や民族学校と呼ばれる外国の民族教育を行う学校かは関係ありません。日本に住みこの社会の中で育っていくすべての子どもたちに、高校相当の学習をする権利を認めようというのです。
ところが実施の直前になって、朝鮮学校生徒をどう扱うかについて、政治も世論も揺れています。朝鮮学校が北朝鮮の民族教育を行っているからです。北朝鮮と日本には国交があるません。両国間には拉致や核の問題など多数の深刻な課題が横たわっています。それが韓国、中国、ブラジルなど他の民族学校とは事情が異なるところです。朝鮮学校の生徒だけを除外せよと主張する反対派の論拠はここにあります。
この反対論が筋違いだというのは、誰が何をする権利を保障した制度なのかを落ち着いて考えればわかるはずです。学校が自校独自の教育理念に基づいた教育をするのを応援する制度ではなく、すべての生徒が自分の選んだ学校で自発的に学習することを応援する制度なのですから。