2008-08-14 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
今年も、お盆を迎えました。
亡くなった人たちに思いをはせ、つながりを感じる大切なこの時期。
日本には、「盆踊り」がありますが、
シンガポールでは、「歌台(ゲータイ)」という、
独特の華やかな歌謡ショーが開催されるって知っていましたか?
旧暦の7月になると、
この世に戻ってくる、亡くなった人たちの霊を慰めるため、
中国系の人々が暮らす、アジアの様々な国や地域で
ハングリー・ゴースト・フェスティバルという行事が行われるそう。
シンガポールの「歌台」も、そのひとつの形のようです。
シンガポールの「歌台」が、どんなものか。
この映画を観ると、そのきらきら感や哀愁がたっぷりと楽しめる。
ためしに、この映画のウェブサイトを見てみてください。
アジアの歌謡曲の哀愁、ステージに点る色とりどりのライト、
きらびやかな衣装、そして暑い国特有の熱気…。
歌い手たちの華やかなパワーと、下町風情の人情物語。
それらが、哀愁とカラフルときらきらでコーティングされて…それが映画『881』。

歌台(ゲータイ)のステージに彗星のごとく現れた、
女の子ユニット“パパイヤ・シスターズ”と
ふたりを見守るあたたかな人々。
ライバル、ドリアン・シスターズとの楽しいバトル。
そんなこんなのお祭り騒ぎの中、
スターダムを駆け上がる彼女たちに起こる哀しい出来事とは―。
とびきりきらびやかで、ひっそりロンリー。
独自のキラキラ世界が、花開きます。
監督は、シンガポールのロイストン・タン。
2005年の『NHKアジア・フィルム・フェスティバル』で、
『4:30』が上映され、このサイトでも2週にわたってインタビューをお届けしました(バックナンバーの2006年2月の号をご覧ください)。
日本での劇場公開は、この作品が初めて。
この監督にしか撮れない『881 歌え!パパイヤ』の世界。
ロイストン監督の楽しいおしゃべりの中に、何が浮かんでくるでしょうか―。
*** *** *** *** *** ***
―日本も、すごく暑いでしょう。ロイストン監督は、色やいろいろなものに敏感に反応されるんでしたよね。暑さも影響します?
「天気がいいところや温かいところに行くと、カラフルなものを着たくなります。カメレオンみたいだよね。日本に来て、暑かったから、カラフルな服をいっぱい買っちゃいました(笑)」
―今日のTシャツもかわいい。
「ありがとう!これは、会社のTシャツなんです」
―グレーと白がお好きなんですよね?
「そう。この前、気づいたら、僕のワードローブは、グレー、黒、白の繰り返しだった(笑)。パパイヤ・シスターズのふたりには「グレー、黒、白しか着ないなら、もう会わないわよ。もっとカラフルな服にしなさい」って言われて(笑)。それで、ミンディ(パパイヤ・シスターズのひとり)がこの前、日本に来た時に、これをおみやげにくれたんです(と、ウエスト部分からチラリと、鮮やかチェックのトランクス!)『881』で私たちにこんなカラフルでレインボーな服を着させたんだから、次はあなたの番よって(笑)」
―(笑)今回の『881』の色のイメージは、ゲータイから?『4:30』は、ブルーとグリーンでしたよね。
「そうそう。今回の色彩は、ゲータイに触発されたんです。ただ、『4:30』は抑えた色だったでしょう、寒色系の。そういう雰囲気を出したのは、そういう色モードに僕自身が2年間入っていたってことなんですよ。でも、そこから一歩踏み出したら、色の世界がぐわっと来た(笑)」
―ああ、反動で(笑)。
「そうそう(笑)。そういうの、ウィルドロー症候群っていうらしいです」
―へぇ。それにしても、パパイヤ・シスターズっていうキャラクターがすごいですよね(笑)。どこから出てきたんですか?
「もともと僕が、ちょっとバカバカしいネーミングの女の子ユニットを作ってみたいんだよねって話していて、“パパイヤ・ガールズ”は?とか言っていたんですね。ミンディとヤンヤン(パパイヤ・ガールズのふたり)もそれを聞いて「ばかね~」って(笑)そんな時に浮かんだんです」
―あぁ、先にパパイヤ・シスターズがあったんですね。
「そうそう。パパイヤが先。もともとパパイヤ・シスターズがあって、それがゲータイと合体したんです」
―パパイヤ・シスターズの“リトル”(ミンディ)と“ビッグ”(ヤンヤン)の組み合わせも面白いですよね。性格も正反対で。
「パパイヤ・シスターズを演じたミンディとヤンヤンとは、彼女たちが舞台に出ていた時に知り合ったんです。ヤンヤンは、とってもハッピーなキャラクター。ミンディはとてもシャイなんだけれど、何かを持っている。このふたりが、鏡で映し出した、ひとりの人間のふたつの側面のように思えて、こういうアイディアが浮かんだんです」
―ということは、プライヴェートから、おふたりは、ああいう人たちなんですか?
「そう。でも、面白いのは、役と実際のキャラクターを逆にしたんですよ」
―へぇ、面白い。
「いつも、そういう実験をするのが、好きなんです」
―演じる方も楽しいでしょうね。
「現場に来てもらって、『今日はこういう風にやって』って言うと、『それ、聞いてないな』って混乱はするんです。僕は、彼らが予期しないことを言うから。でも、皆、それに応じてやってくれています。『今日は何が起こるのかしら』って」
―脚本とは別に、その日その日でアイディアが出てくるんですか?
「そう。サプライズ要素がね。一応、脚本はあるんだけど、その日になると、新しいものを渡したりして。台詞まで変わっている時もあります」
―へぇ。
「演じていて、『自分と逆の人だったら、こういうとき、どう演じるのかな』っていうのを目の前で見ることになるわけですよね。自分ではない人が、自分を演じている。そういうのは葛藤も生むけれど、同時にそれが映画の中に何かを生み出す原動力になったりするんです」
―その日に渡すっていうのは、作った演技を避けるため?
「そうです。出演者、特にふたりは、舞台経験の多い俳優なので、あらかじめ渡すと、用意しすぎて、いかにも演出した舞台みたいになっちゃうんです。だから、軽い心臓発作をしかけてあげないとね(笑)」
ロイストン監督が撮影中に役者さんにしかける“軽い心臓発作”。
これについては、まだまだユニークなバリエーションが。
詳しくは、次週、インタビューの続きとともにお届けします。
まずは、お盆休みに映画館でロイストン・ワールド、満喫してください。

公開中。
公式サイト:http://www.881movie.com/