2006-06-22 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
少し前、ある漫画家の方に好きな映画についてお伺いする機会があった。
その人がこう言うのが印象的だった。
「映画の醍醐味は、普段味わえない世界を味わえること。
時代劇なんて、まさにそうじゃないですか」。
今週末から青山で「巨匠と時代劇」と題した上映会が行われます。
上映されるのは、見ごたえたっぷりの時代劇6本。
なかなかスクリーンで観る機会のない作品が揃います。
皆さんのご両親やおじいさん・おばあさんの世代のスター俳優たちが多数出演。
いまの俳優さんには、私たちと同じ生活を送っているリアリティがありますが、
少し前の時代の俳優さんは、もっている空気も漂う色香も本当に別世界。
作品自体に大人の風情が感じられる、そんな美しい世界に浸ることができるのも魅力です。
気になるラインナップは、まず『羅生門』(1950)。
黒澤明監督がヴェネツィア映画祭で金獅子(最高)賞を受賞した作品
ということは知っていても、スクリーンで観られる機会はなかなかないもの。
主演の三船敏郎や京マチ子の存在感はもちろん、
さすがの撮影、美術、照明、音楽が繊細に融合した世界に圧倒されます。
上映後には、ピッツバーグ大学教授のマクドナルド慶子さんの講演
(無料・日本語通訳つき)もあります。
続いては、同じ日曜日に上映される市川崑監督の『雪之丞変化』(1963)。
市川崑といえば、『犬神家の一族』(1976)などの金田一耕助シリーズ、観たことある人もいるのではないでしょうか?『犬神家の一族』は、市川崑監督×石坂浩二主演のオリジナル・キャストで、来年公開でリメイクされることも話題ですね。
さて『雪之丞変化』ですが、主演は、この作品が映画出演300本目にあたる長谷川一夫。
映画化されるのは3度目になる題材を、市川崑監督が独自のセンスで描いた粋な作品です。
時代劇でありながら、ジャズが流れる…ちょっと観てみたくなりませんか?
ほかにも気になるのが増村保造の『華岡青洲の妻』(1967)。
市川雷蔵、若尾文子、高峰秀子・・・キャストを聞いただけで観たくなります。
そして、増村保造が監督と聞けば、なおさら。
増村保造の作品は、時が経っても決してうつろわないのです。
この監督の映画を観たことがない高校生の人たちには、
『巨人と玩具』(1958)をお勧めしたい。
時代が移り変わっても変わることのない人間の本能に届く作風は、
いま高校生の皆さんが観ても、響くところがあるはず。
この上映会、特徴的なのは、上映される6作品すべてに英語の字幕がつくこと。
日本在住の外国人の方が
「日本の古い映画が観たいけれど、言葉がわからなくて残念」というのをよく耳にします。留学生のお友達や外国人の先生に教えてあげるといいかもしれません。
今週金曜日23日から日曜までの3日間開催。
詳しくは、国際交流基金ホームページ:
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/fsp-6.html