2005-10-20 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
今週末22日から30日まで、
六本木ヒルズと渋谷Bunkamuraを会場に、今年も東京国際映画祭が開催される。
今年のテーマのひとつは、
「ハリウッド・アジア・日本映画のコラボレーション」。
映画祭のオープニング作品『単騎、千里を走る。』は、
『あの子を探して』(1999)『初恋のきた道』(2000)の中国人監督チャン・イーモウの最新作で、日本から高倉健、中井喜一が参加している父と息子の物語。
ちなみに、チャン・イーモウの過去の作品を観てみようという人は、
ちょっと昔の作品『紅いコーリャン』(1987)、いいですよ。
そして、クロージング作品は『力道山』。
タイトルどおり、日本の伝説的プロレスラーの物語だが、
力道山を韓国映画『ペパーミント・キャンディー』(1999)の実力派ソル・ギョングが演じ、
日本からは中谷美紀が参加している。
こんな風に、
アジアと日本の共同作品が映画祭のはじまりと終わりを飾る、今年のラインナップだが、
アジア映画の「いま」を感じることのできる「アジアの風」部門では、
●台湾:電影ルネッサンス
●韓流の源流
●新作パノラマ
の3本の柱が立てられている。
「台湾:電影ルネッサンス」は、
このところ日本で観る機会の少なかった台湾映画の特集で、新作がたっぷり楽しめる。
気軽に楽しめる作品も多いので、ウェブサイトをのぞいてみてはいかがでしょう?
ちなみに、『飛び魚を待ちながら』は、
これまでの台湾映画にはなかったタイプの爽やかな作品らしい。
わたし自身も観てみよう!と楽しみにしている作品のひとつ。
ちなみに、「電影」とは「映画」のこと。
「韓流の源流」では、
韓国映画界でヒットを飛ばす映画人の、普段なかなか観られない作品が登場。
高校生の皆さんは、あまり韓流ブームに関心がなかったかもしれないが、
韓国スターに興味がなくても、
ここ数年の韓国映画に、心から楽しめてクオリティも高い秀作が多いのは事実。
そのパワーの源流をたどる、貴重な3作品が公開される。
1本目は『おまえの勝手にしやがれ』。
90年代以降の韓国映画の隆盛を支えたひとつの要素として
プロデューサー制が確立したことがあげられるが、
その中でも、『殺人の追憶』(2003)などの秀作でヒットを飛ばすプロデューサー、
チャ・スンジェが初めて投資したのが、この作品。
韓国でも、いまは観るのが困難な1本だそうで、私自身とても楽しみにしている。
ちなみに映画祭クロージングの『力道山』もこの人のプロデュース作品。
2本目は『雨降る日の水彩画』。
これは、クァク・ジェヨンの監督デビュー作。
この監督の名前にピンとこなくても、
日本でも大ヒットした『猟奇的な彼女』(2001)は観た人も多いのではないでしょうか。
同じくヒットした『僕の彼女を紹介します』(2004)もこの監督の作品。
3本目は『3人組』。
こちらも日本でヒットした『JSA』(2000)のパク・チャヌクの初期作品。
この監督の過去の作品では、『オールド・ボーイ』(2003)もすごい。圧倒されてしまう。
そして、新作『親切なクムジャさん』も、この映画祭で上映される。
穏やかなお婆さんが主人公……みたいなタイトルでありながら、この映画、実は復讐劇。
そして、「新作パノラマ」なのだけれど、
うれしいのが、普段そんなに観る機会の多くない東南アジアの作品が多いこと。
それも、
現地で人気を呼んだり、話題になったりした映画が数多く含まれているのがうれしい。
たとえば、「かっこいい男の人とは?」「きれいな女の人とは?」という基準は、
国や文化によっても異なるもの。
たとえば、インドの映画を初めて観て、現地でスターと呼ばれる人を見たとき、
「うーん、正直ちょっとオジサンくさい」などという第一印象を持ったとしても、
映画が盛り上がっていくうちに、なんでこの人がスターなのかがわかってくる。
そういう世界の広がり方も楽しい。
昨年のこのコーナーの「東京国際映画祭レポート」でもとりあげたけれど、
アジアに限らず、世界中の若い人たちの感覚が、TVやネットの普及に伴って
国境を越え、「若者文化」として共有できるものになってきている。
だから、アジアの映画といっても、
「アジアの文化を知ろう」という動機で観るというよりかは、
もっと本能に近いところで、
すなおに単純に「楽しそうだから、観てみたい」と思うような作品が増えてきた。
たとえば、
マレーシアでアカデミー賞のグランプリに輝いた『細い目』は、
金城武が大好きな女の子と露天ビデオ屋の男の子のラブストーリーだそう。
ピュアで爽やかな感じに惹かれる……楽しみ。
そして、『モンゴリアン・ピンポン』は、
『香火』で東京フィルメックス・グランプリに輝いた中国人監督、寧浩(ニンハオ)の作品。世界で高い評価を受けている作品で、東京で逸早く観られるのがすごくうれしい。
そのほか、フィリピン、インドネシア、香港、韓国、シンガポール、タイ・・・
いろいろな国の映画が揃う。でも、国で観る映画を選ぶよりは、
単純に映画の個性で何を観るかを決めると楽しいと思う。
サイトの「上映ラインナップ」にも、作品情報が載っているので。
また、昨年、『ウイスキー』や『大統領の理髪師』を上映したコンペ部門も、
今年はどんな秀作に出会えるのか、期待したい。
コンペ部門にしても、アジアの風にしても、
事前情報のほとんどない状態で、自分の直感で観たい映画を選んで、
先入観なしに映画を楽しめるのは、映画祭ならではのこと。
多くの人の評価はそんなに高くない作品でも、
そのときの自分には大ヒットする作品があったり……映画との出会いは個人的なものだなあとつくづく思う。
同じ会場で、これだけ多くの作品をいろいろ観られる機会というのも貴重。
サイトを観て、出かけてみてはいかがでしょう。
どんな映画に会えるのか、
まっさらな気持ちで、私もいろいろ観てみようと思う。
映画祭を取材して面白いことに出会ったら、またこのサイトでご紹介します。
東京国際映画祭公式サイト:http://www.tiff-jp.net/