2005-09-08 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
チャーリーの住む町にある、
世界でいちばん大きくて、世界でいちばん有名なチョコレート工場。
毎日、たくさんのチョコレートが出荷されていくけれど、
誰も、そこで働く人を観たことがない。
とてつもなく大きなブラックボックスみたいな
この工場を経営するのは、ウィリー・ウォンカというフシギな発明家!
工場の中は、どうなっているの?
どんな風に、いったい誰がチョコレートを作っているの?
そして、ウォンカさんて、どんな人———???
そんな人々の疑問が解決する日が、やってきた。
ウィリー・ウォンカが、5人限定でなんとチョコレート工場見学に招待するというのだ。
ウォンカの板チョコのパッケージの中に、
金色にかがやく招待状が入っていたら、大当たり。
誰も見たことのないチョコレート工場の秘密に、世界中の皆がわくわく、ドキドキ……。

『あなたに似た人』などの作品で知られるイギリスの小説家、ロアルド・ダールの
世界中で愛される物語『チョコレート工場の秘密』の映画化。
監督に起用されたのは、まさにこの物語にぴったりのティム・バートン。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)のこわくてチャーミングな世界。
『ビッグ・フィッシュ』(2003)の豊かなイマジネーション。
映像ならではの楽しみを存分に味わわせてくれる、
独特のビジュアル世界で多くの人々から愛されている監督だ。
監督の私生活でのパートナーは、
この作品でもチャーリーの母親役を演じている女優、ヘレナ・ボナム・カーター。
2003年に父親になったことを受けての質問には、
「美しいけれど、ショッキングな経験だった。ホラー映画かエイリアンかというくらい。
まだショック状態で、ピンときていません」。
そして、主演は、ジョニー・デップ。
『シザー・ハンズ』(1990)で初めて組んで以来、
しあわせなケミストリーを起こしてきた、ふたり。
ジョニー・デップは、ティム・バートンのことを
「僕から見たふたりの関係には、完璧な“deep trust(深い信頼)”がある。
そして、その先にはとにかく楽しみが待っているんだ。
それぞれのシーンに、あらゆる可能性をたしかめながら、撮影を進めていったよ」。

撮影中のティム・バートン(右)とジョニー・デップ
原作のあっと驚くような展開を、大切に活かして映画化されたこの作品。
ティム・バートンならではのアイディアが光る、数々のシーンも楽しい。
工場で働く、“ウンパ・ルンパ人”の歌&ダンスは、
原作のイメージをぐっと現代風にアレンジ。
ビートの効いたノリノリの音楽に、楽しくて、ちょっとシニカルな歌詞世界が広がる。
「世界で愛されている物語の映画化だけれど、
そのプレッシャーをティムに感じさせないようにすることが、私の重要な役目。
スタジオや出資者をティムから遠ざけて、彼が豊かな、想像どおりのものを作れるよう、彼のことを守るのが私の仕事でした」と、プロデューサーのリチャード.D.ザナック。
そして、この映画の大きな魅力でもあるのが、チャーリーを演じたフレディ・ハイモア。
愛情を注がれて育った、健全な心をもつチャーリー。本当に、かわいい。
彼をこの役に推薦したのは、ジョニー・デップ。
「『ネバーランド』(2004)で共演して素晴らしい少年だと思った。
ティムが会ったら、必ず起用するという確信があって紹介したんだ」。
ティム・バートンも、
「チャーリー役は難しいんだよ。シンプルな役なので、
チャーリーの持ち味を、その子がもともと持っていないと、出てこないんだ」。
好きな場面を尋ねられたプロデューサーのザナックさん。
「チョコレート工場の入り口のシーンが、すばらしい。
ウォンカがどんな人なのかを見事にあらわしている。
子供っぽくて、なんかヘンで、おもしろい。
ジョニー・デップは、完璧に彼を演じているよ」。
このシーン、一見すごくかわいいのに、あれれ……シーンが進むに連れ、
なにやらアヤシゲな“ティム・バートン フレーバー”が、ただよってくる。
つづいてのシーンで、工場に入った面々が、ウォンカから、
工場内は暑いので、上着を脱ぐことを勧められるシーンでは、
思わず、宮沢賢治の『注文の多い料理店』を思い出してヒヤリ。
なんだか、おかしなウォンカさん。
はたして、彼がこの工場見学を企画した本当の意図は?
ウヒヒな展開に、びっくり&どっきり。その先にあるものは———。
今週末から公開。
公式サイト:http://www.charlie-chocolate.jp

記者会見でのショット。ジョニー・デップ(中央)は10年ぶりの来日。