2005-09-01 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
これ、理想の「ひと」と読みます。
いったい誰が理想のひとなのか——それはラストのお楽しみ。
なんとなく映画でも観ようかなと思って、この映画を観た人がいたら、
その人はきっと、とてもしあわせな気持ちで映画館を後にするはず・・・。
舞台は、1930年代のイタリア・アマルフィ海岸。
各国の上流階級の人々が夏を過ごすために訪れる場所。
降り注ぐ陽射しのまぶしい、開放的なこの地で物語は展開します。
主人公のひとりは、21歳のメグ。
アメリカの大富豪に見初められ、結婚して1年。
一心に夫を思い、彼を信じている女性。
一方の主人公は、アーリン。
自分に正直に生きてきた彼女の恋も、世間にとってはスキャンダル。
数々のスキャンダルを潜り抜け、いまに至っている大人の女性。
人生の翳りを知らない若いメグと、
「結婚は陽の射さない部屋のようだったわ」と話すアーリン。
年齢を経ていく段階のなかで、
ある時期の女性のありようを切り取ったような、ふたりの存在が興味深い。
もしかしたら、アーリンも、
メグの年齢の頃には彼女のようだったかもしれない。
とある場所で、
自己紹介するまでもなく、ふたりが何気ない会話を交わすシーンがあります。
そのときに、アーリンがメグに言う台詞が印象的。
「人に合わせてばかりいると、自分を失うわよ」。
メグを演じるのは、いま最も期待される若手女優といってもいいだろう
鮮烈な美しさを放つ、スカーレット・ヨハンソン。
公開中の『アイランド』を観た人の中には、
冒頭シーンの彼女の美しさにハっとした人も多いのではないでしょうか。
『モンタナの風に吹かれて』(1998)の頃から気になる存在ではありましたが、
その後、『ゴースト・ワールド』(2001、この映画、高校生の人にお勧めしたいです)、
『ロスト・イン・トランスレーション』、『真珠の耳飾りの少女』(ともに2003)と
着実な成長を見せてきた彼女。この映画のスカーレット・ヨハンソン、
この年齢でしか発されることのない、無防備で向こう見ずな美しさが印象的です。

そして、そのスカーレットにも負けない美しさを醸し出しているのが、
アーリン役のヘレン・ハント。
ヘレン・ハントには“知的なキャリア・ウーマン”のイメージが強いのですが、
この映画の華奢で洗練されたアーリンは、エレガントで本当に素敵。
成熟した大人の美しさがあふれるよう。
やがてメグは、自分の夫とアーリンが一緒にいるのを目撃します。
まさか、メグの夫が、アーリンの恋の相手に……?!
戸惑うメグと一緒にスクリーンのこちら側で驚いていると、物語は意外な方向へ——。
原作はオスカー・ワイルドの戯曲『ウィンダミア卿夫人の扇』。
何もかもがピタっとはまった、薫り高い1時間33分。
女の人の人生をめぐるような、しあわせな心の旅にいざなわれます。
ちなみに原題は“A GOOD WOMAN”。
9月10日よりシネスイッチ銀座ほかにて公開。
http://www.gaga.ne.jp/goodwoman/