2005-07-14 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
その季節が訪れると、
見渡すかぎりの白い世界のあちらこちらから、
無数の皇帝ペンギンたちが1点を目指して集まってくる。
長い長い列をつくって、1列に。ある1点をめざして。
全方位から1点を目指して集まってくるペンギンたちは、
上空から見たら、ちょっと乱れた放射状。
その1点がどこなのか、人間の目には何の目印も見当たらないのだが、
迷わず集まってくるペンギンたちのフシギ。
果たして、ペンギンたちが向かっている場所とは———。

皇帝ペンギンの命のドラマをカメラにおさめたドキュメンタリー。
遠くから見ると、燕尾服を着た人間がゆっくりゆっくり歩みを進めているようにも見える
ペンギンたちの行進は、もう卒倒しそうなくらいにかわいい!!
と、最初はそんな気持ちで見ていたのだが……。
メスが身ごもり、やがて子ペンギンを産むと、
母ペンギンは、わが子を夫にあずけ、
(寒さから身を守るため、子ペンギンは父ペンギンのぬいぐるみみたいな、
たっぷりとしたスカートのような足元に隠れる!)
食料を確保するために、危険な旅へと旅立つ。
外敵の危険、猛吹雪、極度の寒さ……
ペンギンたちが1年を無事越すのは、とても厳しいこと。
ひたすらに広がる白い世界で、
隠れる家もなく、ただひたすら寒さに耐え、外敵の攻撃から身をまもり、
ただひたすらに生きようとするペンギンたち。
やってくるものを真正面から受け止めて、
子供を守り、使命を果たす彼らの姿に、
観ているこちらもなんだか必死になってしまった。
よくこんな映像が撮れたな…と思わせる、リアルなペンギンの生態に迫ったこの作品。
たまに登場する音楽やナレーションが、フランス人監督の作品だからか、
なんだか“アムール”な感じ。誌的でロマンチック。
違ったものの見方をする人が撮ったら、
ペンギンたちのドラマも、まったく違ったテイストに見えてくるのだろう…と
思うと、それもまた面白い。
装飾のない生き物のドラマは、それを見る人の意識のありようを素直に映し出す。
余計なことを考えず、ただ生きる。その力強さに頭が下がる。
かわいくて、真摯なきもちにさせられる、
氷の世界のドキュメンタリー。
23日より公開
(恵比寿ガーデンシネマは、7月16日先行ロードショー)
公式サイト:http://www.gaga.ne.jp/emperor-penguin/