2005-03-24 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
偉業を果たした人物の伝記を読むと、
その華やかな業績の裏側に隠された闇の深さに驚かされることが、しばしばあります。
この映画も、そう。
『アビエイター』には、
ハリウッド黄金期の華やかな人間模様、
映画監督・飛行家(aviator)として
華々しい経歴をもつハワード・ヒューズの女優たちとの恋、
飛行家(アビエイター)としての既存の枠にはまらない、ワクワクするような挑戦、
大手航空会社を買収したヒューズの、政治の世界をも巻き込んだ、
パンナムとの国際線ルート獲得をめぐる闘争劇……
ドラマを面白くさせる、実にさまざまな要素が含まれていて、
それがマーティン・スコセッシによるスムーズな映像で描かれ、引き込まれるのですが、
これだけの要素が、実在のひとりの人間の人生にすべて含まれていたものだと考えると、
なんと激しい……と、驚かずにはいられません。
陽サイドと陰サイドの「ふり幅」が、とてつもなく大きく、
自分の中にいる、性質の異なる何十人もの自分(もっとだったかもしれませんが)を抱えるのは、さぞかし、ものすごいことだったろう…と想像を働かせてしまいます。
そんな彼の心の内が、
この映画で描かれている様々なエピソードに滲んでいて、興味惹かれます。

ひとりの人を動かす衝動というのは、その人にしか感じられないもの。
だから、人並みはずれて強い衝動を持つ人というのは、
しばしば周りの人間と相容れなかったり、周りの人間を巻き込んでしまったり、
いろいろなことが起こるわけですが、
傍から見れば「わがまま」にも映る、完璧主義の彼の行動の、その向こうに見える、
飛行家としての純粋な夢に、ワクワクさせられます。
なんて、自由に夢見る人なのだろう…と。
でも、それだけ自由に羽ばたくことができる、その裏では、
とても深い闇の部分をもっているわけで、
レオナルド・ディカプリオが、そのダーク・サイドを繊細に演じていて、唸らされます。
観ていくうちに、
『バスケットボール・ダイアリーズ』(1995)での彼の演技を思い出しました。
レオナルド・ディカプリオの演技を見ていると、
「演じることが楽しくて仕方がない人の演技」だなあ…と感じます。
映画に限らず、それをするのが本当に好きで仕方がない人が何かをする様子というのは、
周りの人たちに、とてつもない「快」を伝播していくもの。
少年でも大人の男でもない、その中間の年頃のあやうい魅力で人気を呼んだ彼ですが、
今後、大人の役者としてどんな顔を見せてくれるのか……
そんなディカプリオの数十年後の表情が、
この映画の中で見せた表情に滲んでいたのも興味深かったです。
20世紀・アメリカを生きた、実在の人物を描いたスケールの大きな伝記映画。
大きなスクリーンで、そのスケールを堪能したい作品です。
公式ホームページ:http://www.aviator-movie.jp