2005-02-24 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
ブルース誕生100年のメモリアル・イヤーだった2003年。
その記念事業として、名匠マーティン・スコセッシ製作指揮の
7本の長編ドキュメンタリー映画が製作された。
その名も、“THE BLUES Movie Project”。
ずいぶん前に、このコーナーでもご紹介した『ソウル・オブ・マン』(2003)も、そのひとつ。
この映画『ライトニング・イン・ア・ボトル』(2004)は、
そのプロジェクトの最後を飾る大イベント、
2003年2月7日に、ニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールで行われたライブ、
“A SALUTE TO THE BLUES”のダイジェスト版。
芯から体を揺さぶるブルースの魅力を、たっぷりと味わわせてくれる。

大御所B.B.キングと、ワイルドな演奏を聴かせるボニー・レイット。
冒頭は、アンジェリーク・キジョーの歌声。
西アフリカ、ベニンのシンガーである彼女の、この声はすごい。
以前、モンゴルの女性が歌う歌を聞いた瞬間、
突然に、涙があふれて止まらなくなったことがあった。
声は、すごい。
その人のもつ、波長や精神を、何の理屈も通さずに、ダイレクトに聴く人に届けてしまう。
さらに次々に個性の違うミュージシャンが登場。
それそれの「ブルース」を聞かせてくれる。
たとえば、人種差別の法律を「困ったもんだよ」と歌にする黒人の女性シンガー。
並々ならぬ「怒り」を、ユーモアに変えてしまう懐のでっかさ!
互いのプレイを心から期待しあって、歓び合うミュージシャンたちの姿は、
音楽の心地よさ、そのもの。本当に、きもちいい!
「ライバル意識は?」と訊ねられた、あるミュージシャン。
「最初はあったよ。でも、自分のスタイルを持てば、関係ない。
俺は、俺。人は人だよ」。

エアロスミスのスティーブン・タイラー&ジョー・ペリーも登場。
さまざまなミュージシャンのパフォーマンスの間に挟まれる、名言の数々もグっとくる。
「ブルースは、譜面におこすのが難しい音楽だ」
(=その行間を、言葉に表すことはできない)
「俺は、アメリカと世界の音楽をやる。テキサス・スタイルで」
「ブルースは、男と女の間に流れるものだ。“〜風に”なんて言って作るものじゃない」
うーん、しびれます。
ブルース……その土地から体から滲み出してくる、まさに「音楽」。
理屈ぬきに、あふれてきてしまう、生まれるべくして生まれる「音楽」。
だから、かっこいい。そして、心のド真ん中に届く。
日本人の私たちにとって、そういう音楽って何なのだろう…。
この映画にグっときた人は、
マーティン・スコセッシ監督の『ラスト・ワルツ』(1978)も。
“ザ・バンド”の解散ライブの熱気が伝わってくる。
でも、ライブ本来の楽しみは、
同じ時間、同じ会場に居合わせる…まさに“ライブ”ということ。
スクリーンで観て、こんなに伝わってくるのだから、
会場にいた人々を包んだ興奮は、さぞかしだったろう。
3月19日より公開。
スコッセシ総指揮の
THE brUCE Movie Projectの公式サイトは
http://www.blues-movie.com/