2005-01-20 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
いまだに上演され続けている、ミュージカル『オペラ座の怪人』。
私も21歳の夏、ロンドンで観ました。
滞在中になんとなく観たくなって、チケットを買って出かけたのですが、
あまりに素晴らしく、そのときのことを思い出すと、いまでも体が震えます。
ロンドンの劇場は、劇場空間自体が、もう、ミュージカルの一部。
東京でいうならば、歌舞伎座がそういう場所かもしれません。
内装も、場内の仕掛けも、
そして幕間に頂く“みちばちアイス”(歌舞伎座の中で売っているのです)も……
肝心の舞台だけでなく、その周辺のすべてを含めて、
半日かけて歌舞伎を満喫する楽しみがあると思うのです。
ロンドンの劇場内に入ったときの、歴史を感じさせる、華やかな喧騒。
隣の席に座り合わせたご婦人との、何気ないおしゃべり。
観劇がより身近に生活に定着しているロンドンでは、
人々はとても気軽に舞台を観に来ていて、
日本の野球場のように首から紐のついた箱を提げた、アイスやパンフレットを売っている売り子さんも、客席の間をまわっていたりします。
その中に包まれていると、もうミュージカルが始まっているような感じ。
そして、幕が開いたとき。
あの印象的な音楽がはじまると、そこへ…!!
このオープニング、本当にすごい。
場内を一瞬にして包み込むオープニングの興奮を、
一体どうやって映画に表現するのだろう…
映画化されるという話を聞いたとき、まず、そう思いました。
映画では、ある工夫がなされていて、オープニングの風を思い起こさせます。
このミュージカルのあまりに美しい楽曲を手がけた作曲家、
アンドリュー・ロイド=ウェーバー氏が、
(『キャッツ』や『エビータ』などのナンバーも、この人によるもの)
「ミュージカルを観られない人にも、この作品を観てほしい。
ミュージカルは何度も上演されるが、形には残らないので、映画の形で残したい」という思いで、自ら、プロデュース・脚本を手がけたのが、
この映画版『オペラ座の怪人』。

ウェーバー氏自身がプロデュースしているだけあり、
もとのミュージカルの心を大切にした、舞台に忠実な作り。
映画ならではの、自由に空間を設定できる利点を活かし、
舞台にはない、新たなシーンが3場面ほど、加えられています。
主人公であるプリマドンナ、クリスティーヌを演じたエミリー・ロッサムは、
撮影当時、17歳。可憐な美しさは、ピュアなクリスティーヌにぴったり。
7歳からメトロポリタン・オペラで歌ってきたという彼女、
すなおで、美しい歌声も素敵です。
『歌追い人』(2000)でも印象的な歌声を披露しており、『ミスティック・リバー』(2003)や『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)にも出演しています。
一方、彼女に叶わぬ恋をしてしまう、“ファントム”…オペラ座の怪人を演じるのは、
『トゥーム・レイダー2』などに出演しているジェラルド・バトラー。
切ない思いを抱える、ファントムを哀愁たっぷりに演じています。
芝居がからない、より現代的なファントムといえるかもしれません。
19世紀・パリのオペラ座を舞台に、
やがてプリマドンナへと成長していく歌姫、クリスティーナと、
はるか昔からオペラ座の謎の場所に身を置く、
彼女に恋をした“音楽の天使” ファントムの哀しい恋の物語……。
監督は、『セント・エルモス・ファイヤー』(1985)、『依頼人』(1994)『フォーン・ブース』(2003)などを手がけるジョエル・シーマカー。
このミュージカルの楽曲、本当に美しい。
公式ホームページ:http://www.opera-movie.jp/