2005-01-06 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
あけまして、おめでとうございます。
東京近郊は、雪の年越し、そしてお正月。しんしんと、美しかったですね。
先々週から、冬休みにビデオで観られる作品をとりあげていますが、
1年のはじめにご紹介する映画、何にしようかと、少し考えました。
この機会に、あらためて名作をとりあげるのはどうだろう、とも思ったのですが、
逆の発想で、今日は、もっと個人的な映画体験ということで、
わたし自身が高校生のときに、同じ歳の友達から「よかったよ」と教えてもらって観た、
懐かしい映画をとりあげてみようと思います。
いま高校生の人たちが観たら、どう思うのかな……。
タイトルは『四月怪談』(1988)といいます。
主演は、『北の国から』シリーズの中島朋子さん、柳葉敏郎さん。
原作は、大島弓子さんの同名コミックです。
主人公は、ごく普通の高校生の女の子。
いつもどおり学校へ向かった彼女は、
通学途中で事故に遭い、なんと亡くなってしまいます。
でも、それはショック死のような状態で、彼女の体自体は無傷のままなので、
いまなら、体に戻って生き返ることができる。はやく戻りなさいと、
幽霊になった中島朋子演じる主人公に、柳葉敏郎演じる先輩幽霊が言います。
ところが、「私のとりえなんて、何があるの?」と、
自分の日頃の生活にままならない感情を抱いていた彼女にとっては、
あらゆる場所に飛びまわれる幽霊の状態の方が断然、新鮮。なかなか戻ろうとしません。
先輩幽霊の青年は、死んでしまってはできないこと、自分は生き返りたいと思っていること、生きていることがどんなに素敵なことかを必死に説得しつづけます。
それでも、戻ろうとしない彼女。
やがて、彼女の遺体が火葬場にいってしまう時がきて—。
人生のあるときに観て強い印象を残す映画というのは、
必ずしも、巨匠の名作とか、パワフルな秀作とかではないように思います。
たとえば、地方の映画館の2本立てで、観たい映画と同時上映だから観た、
ほとんど興味のなかった映画に、思いもかけず泣かされてしまったり……。
この映画は、高校生のときに一度観たきりなので、
いま観たら、また違った印象を持つかもしれません。
でも、当時高校生だった私の心には響いた作品でした。
そのときでなければ味わえない感動。とても個人的な、その人だけの思い。
映画って素敵だなあ…と思います。
ファンタジックな音楽も印象的で、いまでもよく覚えているのですが、
何といっても、ラスト・シーンがよかった。
主人公が、水たまりをバシャバシャする。
それは、まさしく生きているから、できること。
それまで、そんなことに気づきもしなかった彼女は、生まれて初めて、
水たまりをバシャバシャできる喜びに気がつく……。
ただ生きているっていうことが、こんなにも素敵なことだったなんて。
それに気づいた後の、普段どおりの朝ごはんや、学校に向かう通いなれた通学路が、
いつもと違うものに感じられる、よろこび。
大島弓子さんの原作がすばらしいことは、わたしが言うまでもありませんが、
この作品、本当にパワフル。何度読んでも、色褪せません。
男の子にも、女の子にも、おすすめしたいです。
いつもと同じ毎日の生活。
ついつい、あたりまえのように思ってしまいがちだけれど、
原作の言葉を借りれば、
「人間って ものすごいキセキみたいな均衡のもとに動いていられるんだねえ……」
(主人公の女の子・初子が亡くなった知らせを聞いた、クラスの友達が言う言葉)
1日をちゃんと生きたいなあ……とあらためて思う、1年のはじまりなのでした。