2004-12-16 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
美しすぎるほどにピュアで、
圧倒的に、悲しい……
31歳で衝撃的な死を遂げた、詩人シルヴィア・プラス。
現在も、その作品世界がアメリカを中心に多くの人々に共感を呼んでいる彼女の
青春時代から亡くなるまでを描いたのが、この映画『シルヴィア』。
映画が始まってから、エンドロールが流れるまでの110分。
うっとりするような美しさ、圧倒的な悲しみ……
映画の世界に完全に連れていかれてしまいました。
冒頭の映像がみずみずしくて、まさに「詩」。
この映画のひとつの魅力は、「詩」の美しさ。
「日本では、詩を読むということが、パフォーマンスとして日常生活に浸透していない」
と誰かが言うのを聞いたことがありますが、たしかに、そうかもしれない…。
欧米の映画を観ると、お酒を飲んだりする機会に、歌を披露するように
音楽のリズムに乗せて、登場人物が詩を朗読するというシーンがよく見かけられます。
詩を読むことが、もっともっとカジュアルで日常的なのですね。
日本も、時代をさかのぼれば、
和歌を詠むことは、教養のひとつであり、日々の愉しみであったはず。
日本人は、いつから「詩」を読むことをしなくなったのだろう…と、ふと思いました。

若き日のシルヴィアは、ケンブリッジ大学留学中に、
後に英国王室が認める“桂冠詩人”となるテッド・ヒューズと出会い、
互いの中に強烈に何かを感じ合い、激しい恋に落ちます。
ふたりの、「詩のつむがれる暮らし」の美しさに、うっとり。
そして、その美しさの中での、シルヴィアの怖いくらいのピュアな美しさが、圧倒的。
感情を、棚上げしたり、少しブレーキをかけたり、コントロールすることができない、
真正面から全身で受け止めることしかできない、彼女の不器用さは、
怖くもあり、そして、そのピュアさが、おそろしい程に美しい。
シルヴィア役のグウィネス・パルトロウの演技がすばらしく、
後半からは、もう怖いくらい。鳥肌が立つ思いがしました。
彼女の表情の「真実」に、何度も何度も「う」ときてしまう瞬間が、ありました。

劇中、彼女の作品の愛読者が、彼女の作品について、こう言います。
「美しくて、こわい。何か、とりつかれるような感じ」。
観終わったとき、泣きたい気持ちでいっぱいになるのですが、
でも、思い切り泣くことはできなくて、
心の奥のいちばん痛いところをやられてしまったような…そんな気持ちになる作品です。
シルヴィアが、怖いくらいにピュアで、あまりに美しいから。
12月25日よりBunkamuraル・シネマ、シネ・スイッチ銀座にて公開。
公式ホームページ:http://www.sylvia-movie.com