2004-12-09 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
今日、ご紹介するのは、わずか8分のアニメーション作品。
でも、その8分間の、豊かで美しくて心を揺さぶることといったら!
アコーディオンとピアノで奏でられる
『ドナウ川のさざ波』のどこか哀しくて美しい旋律にのせて、
独特のタッチの絵で描かれた、茶の濃淡の淡い、ノスタルジックな絵世界。
アニメーション作品というと、
人や物の輪郭がくっきりと描かれているものが多いように思うのですが、
これは「影のある」アニメーション作品。
輪郭が、実写のように曖昧で、有機的な、呼吸する絵なのです。
濃茶で塗りつぶされた、影の部分がところどころ登場することも大きいのかもしれません。
幼い少女と、父。
ある日、小さなボートに乗って岸辺を離れた父は、そのまま、戻ってはこなかった……。
幼い少女は、
風が吹いても、雨が降っても、父と別れた、その岸辺を訪れつづける。
やがて季節は移ろい、巡りくる四季を幾たびも経験し、少女は大人になる。
それでも、彼女は岸辺を訪れつづける。
時は移ろい、大人になった少女は、さまざまな経験をする。
それでも、彼女は岸辺を訪れつづける……

ラスト・シーンには、ぐらっと心を揺さぶられてしまう。
この作品には、一切の台詞がありません。
こんなにもシンプルな動きのなかに、「人生」を感じさせてしまうなんて……。
この作品を手がけたのは、オランダ出身のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。
監督自身がこの映像を絵本にした、絵本の『岸辺のふたり』も出版されています。
日本版は、うちだややこさんが翻訳しています。
そして、今回の上映には、彼の短編2作品も同時上映されます。
2本合わせても、10分に満たない短い作品ですが、こちらも愛すべき作品。
やはり、台詞は一切なし。映像と音楽だけで、すっかり世界へ引き込まれます。
『TOM SWEEP』は、
『トムのお掃除やさん』といったところでしょうか。
黄色の背景をバックに、
道端のゴミを掃除してゴミ箱へ入れることに、命をかけているんじゃないか……
そのくらいの勢いで街を掃除する、お掃除やさんのトムと、ゴミを散らかす街の人々の
かわいい攻防が、コミカルにリズミカルに描かれていきます。
大道芸の人がかけているような音楽も楽しいし、
とにかく、登場するキャラクターと、そのタイミング、構成がすごい。
ラスト寸前、にんまり笑ってしまう、トムとある人物のちょっといいシーンが登場します。
『THE MONK AND THE FISH』は、『お坊さんと魚』。
こちらも、『岸辺のふたり』と同じく、水彩画のような、淡い濃淡のタッチがすばらしい。
なんと、お坊さんが魚をつかまえようと躍起になる、という内容なのですが、
ああ何でしょう、このコミカルな動きのかわいさは!!
なんか……予想外の動き!
観ていると、子供の頃みたいに、心の底からうれしくなってきてしまう。
そんな動きなのです。音楽とのコンビネーションも絶妙です。
『岸辺のふたり』は、2001年の米・アカデミー賞短編アニメーション賞をはじめ、
世界のさまざまな映画賞を受賞した作品。
今月18日より、新宿テアトル タイムズ スクエアにてモーニング&レイトショーされます。