2004-11-18 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
クリスマス・イヴ。
サンタ・クロースを待つ、わくわくした気持ちと、
雪の降る夜の、すべてを包み込むような静けさ。
主人公の少年のドキドキしている息遣いまでもが伝わってくるよう……
クリス・ヴァン・オールズバーグの絵本『ポーラー・エキスプレス』
(日本では『急行「北極号」』のタイトルで出版されています)の
神秘的で美しい世界を再現した、この映画のオープニングにすっかり引き込まれました。

手がけたのは、『フォレスト・ガンプ/一期一会』のオスカー・コンビ、
ロバート・ゼメキス監督とトム・ハンクス。
この絵本の繊細で美しいタッチを壊さないために、
実写でも、漫画的なアニメーションでもない方法を……ということで採用されたのが、
パフォーマンス・キャプチャーという手法。
主人公の少年をはじめ5役を演じたトム・ハンクスは、
体にぴったりとしたダイビング・スーツのような“キャプチャー・スーツ”に身を包み、
映画の登場人物を演じる、
彼には、頭と顔だけで153ものセンサーが取り付けられていて、
それを200台もの赤外線カメラが追う、
つまり、トムの微妙な表情の動き・体の動きが、
そのまま登場人物の絵に反映されるのです。
「伝統的な手法のアニメーションで難しいのは、
登場するキャラクターをお客さんが感動するほどに描くことです。
それには、才能あるアニメーターが必要でした。
でも、パフォーマンス・キャプチャーは、
本物の俳優がリアルタイムで演技をする、
そこで起こす感情の微妙な「ひだ」をキャプチャーする技術です。
名優が本能的に演じるすばらしい演技が、そのまま画面に生きる。
そこが、革新的なところです」
と、監督のロバート・ゼメキス。
これまでも、使用されることのあったモーション・キャプチャーという手法と違うのは、
体の動きのデータだけでなく、
表情や指先などの細かな動きまでを、体の動きと同時にキャプチャーできることだそう。
そのおかげで、
絵の人物たちが実際に生きているように見える、不思議にリアルな世界が広がります。
5役を演じたトム・ハンクスは、
「舞台をやっているような感覚です。
照明もセットもないところで、イマジネーションだけで演じる、
大学の演劇部でやったような感じ。
(キャプチャー・スーツを着て)スパイダーマンみたいな格好して、
傍から見たらばかばかしい格好かもしれないけれど、
だからこそ自由に役に入り込めました。
少年が初めてサンタに会うシーンにも、その役になりきって、
涙が出るほどの、そこにいるような感動を味わえました」。

会見の模様。
トム・ハンクス(左)と監督のロバート・ゼメキス
29ページの原作絵本を
1時間40分ほどに膨らませた、この作品。
少年が覗きこむ本の下から少年の表情を捉えたり、
「ポーラー・エキスプレス」に乗り込んだ少年が車外に飛ばしてしまった、
隣の席の女の子の乗車券が、映画のある部分でだけ主人公になって冒険を繰り広げたり、
そして、息をのむような、「ポーラー・エキスプレス」の走行ルートがあったり……
ハリウッドならではの技術で、細かなところ、大きなところ共に、
原作世界がスケール大きく膨らんでいます。
物語途中は、ジェット・コースターに乗っているような錯覚を起こさせる
少年の大冒険スペクタクルのアクション・シーンも。
はたまた、ミュージカル・シーンも登場。
イヴの夜、子供たちに訪れた、楽しい玉手箱のような一面もこの映画にはあります。
「スペクタクルも見所ですが、
誇りに思うのは、感情の微妙な細かなところを出せるところ。
少年の魂の旅を描いた、人生の比喩がある、そこがすばらしいと思います」
と、ロバート・ゼメキス。
イヴの夜、突然に家の前に現れた北極行きの急行列車「ポーラー・エキスプレス」。
車掌さんとある人物をのぞいて、子供たちだけを乗せたこの列車。
乗車した子供たちには、いったい、どんな冒険が待っているのか—。
公開は今月27日から。
公式サイト:http://www.polar-express.jp

ロバート・ゼメキス監督と、プロデューサーのスティーブ・スターキー。
これは、今年の夏に、この映画の完成途中の映像を披露してくれた会見でのショット。
おふたりのこの笑顔!
本当にうれしそうに映像の説明をするおふたり、素敵でした。