2004-09-02 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
今週のはじめに、『秘境モォトゥオへ…』という映画の試写を観てきました。
上映が始まると、壮大な自然の風景とその中に暮らす人々のイキイキとした素直な表情に一気に引き込まれ、街中でのいつもの自分の生活が遥か彼方に感じられました。
この感覚も、映画のひとつの醍醐味。
自分とは違った環境で暮らす人々の暮らしぶりを映画で「体験」すると、
自分にとってはそれしかない、日々繰り返される「当たり前」の価値観が、
世界のさまざまな価値観のほんの1パターンに過ぎないのだということに気づかされる。
これは、ワクワクするもの。
そしてまた、そうすることで、新たな視点から日常生活を見つめ直すこともできる。
これは、まさに旅をしてきたときの悦びと同じ。
約1時間30分の上映が終わる頃には、
映画を観る前の自分と明らかに違うきもちの自分がいる。
そんな悦びを久しぶりに味わいました。
この映画、物語はこう。
中国のチベットの南の方に、モォトゥオという地域があります。
ここには自動車道路が通っておらず、ここに住む子供たちは山を越え、
雪崩や落石の危険と隣り合わせの状態で遠路はるばる学校に通っていたといいます。
それを聞いた上海の老人トン・ションは、自分の全財産を費やして、
この地域に小学校を建設します。
映画は、この話を前提に、
老人に会いに行く用事のある人たちが集まるところから始まります。
上海から来た記者、老人の心臓ペースメーカーの調子を観にいく女医、
そして現地の学校の校長先生やその娘、そして荷物を運ぶ仕事の少年や男性…
老人に会いに行く一行は、
幾多の危機に遭遇しながら、険しい山道を越え老人のいるモォトゥオを目指します。
記者と女医さんを迎えた校長先生のわけへだてない心からの歓迎ぶりや、
娘のいきいきと自然で元気な個性。荷物を運ぶ少年の、濁りのない笑顔。
人間ありのままの状態で、すなおに生きている人々の様子は、
観ている人のきもちをやわらかくさせる…。
まるで、自分も一行の中に混ざってモォトゥオを目指している気分になります。

この映画は、内モンゴルの監督が撮った作品。
日本にいながら、内モンゴルの監督の映画を目にする機会は、なかなか貴重なもの。
そんな、ここでしか観られない映画に出会える映画祭が9月10日から開催される
「アジアフォーカス・福岡映画祭」。
今年は、15カ国から27の作品が集められ、上映されます。
旅する悦びを味わいに、ぜひ出かけてみてください。
公式ホームページ:http://www.focus-on-asia.com