2004-06-03 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
『冬のソナタ』を観たことがない人でもその名は知っている…いまや、日本でもすさまじい人気ぶりのペ・ヨンジュン。4月初旬に来日し、多くのファンやマスコミを沸かせたのは記憶に新しい。そんな彼の初の主演映画『スキャンダル』が、現在公開中だ。
「イメージが固定してしまうのは、役者にとって好ましくないこと。
いままでの出演作のソフトなイメージとは違う役に挑戦したかった」。
ペ・ヨンジュンが、周囲の反対を押し切って敢えてトライしたのが『スキャンダル』のプレイボーイ役。

『スキャンダル』より
たびたび映画化されたフランスの小説『危険な関係』(1782)をもとに、舞台を18世紀末の李朝時代に移して描かれているのがこの『スキャンダル』。ペ・ヨンジュンが演じる役どころは、科挙に合格したものの官職に就くことを嫌い、詩や書画などを気ままに楽しむ風雅な暮らしを送る両班(ヤンバン:李朝時代の特権階級)の男性、チョ・ウォン。戯れの恋愛に日々を過ごし、今日も明日も、あちらこちらの女性とあんなことやこんなことをしている。
そんな彼は、従妹であるチョ夫人と仲がよい。チョ夫人は、もともとはチョ・ウォンの叶わなかった初恋の相手。だが、現在は政府高官の妻。互いへの思いは露にしないまま、「おぬしも悪よのう…」的な越後屋テイストで悪い遊びの話に花を咲かせるふたり。ある日、チョ夫人がチョ・ウォンにもちかけたのは、とある賭け。それは危険な恋愛ゲームだった。その対象に選ばれたのは、婚姻を結んだ直後に夫に先立たれ、貞淑を守り続けている未亡人チョン・ヒヨン。天主教(カトリック)の集まりに参加し、熱心な奉仕活動をする真面目な女性。チョ・ウォンが彼女の心を掴むことができれば、賭けは彼の勝ち。その褒美にチョ夫人は、“チョ・ウォンがかつて自分に求めていたもの”を差し出すという。その日から、彼はあの手この手で、頑なに彼を拒むチョン・ヒヨンに迫るのだが…。
思わぬスキャンダルへと発展するラスト・シーン…3人の表面からは見えない真の心模様が見えてくる。戯れの恋に身をやつしていたチョ・ウォン、賭けを持ちかけたチョ夫人、そして賭けの対象となったチョン・ヒヨン。3人それぞれの心に映るものは一体—。
チョ夫人を演じるのは、『情事』(1998)も記憶に新しい韓国のトップ女優、イ・ミスク。そしてチョン・ヒヨンを演じるのは若手演技派、チョン・ドヨン。このふたりの演技も見ごたえがある。
そして、この作品で興味引かれるのが、当時の暮らしぶりを見せる美術。衣装や宝飾品、家具など細部に至るまで美しく、これらの製作準備に約10カ月、2億円の予算が注がれたという。女性たちのかんざしや化粧道具、チマ・チョゴリの色彩(登場人物の心情の変化を衣装の色で表している)、さらには当時の女性の化粧や下着など生活様式まで垣間見えるところも興味深い。

記者会見でのペ・ヨンジュン
この映画のキャンペーンのため、4月上旬に来日したペ・ヨンジュン。渋谷公会堂で続いて行われたファン・ミーティングと記者会見では、ひとつひとつの質問に真摯に答える様子が印象的だった。「微笑み」が評判となっている彼だが、その時その時の自然な表情が印象的で、優雅なしぐさの中にも31歳の飾らない素顔を垣間見せた。ファン・ミーティングのラストでは、明るくなった観客席を見ながら、台湾やシンガポール、香港や韓国から来たファンの人たちを日本のファンたちに紹介。日本でも、『冬のソナタ』を観てペ・ヨンジュンのファンになったことで韓国に興味を抱いた人たちが大勢いることを彼自身も自覚していて、いま彼自身のいる場所からアジアの人たちにできることを真摯につとめようとする姿勢を感じさせた。
『スキャンダル』は、現在公開中。
公式ホームページ:http://www.scandal-movie.com