2004-03-11 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
今日、ご紹介する映画は『花とアリス』です。
なんて素敵なタイトルなのだ—と思ったのですが、
これは主人公のふたりの女の子の名前から来ています。

映画『花とアリス』より
(C)2004 Rockwell Eyes・H&A Project
この映画の主人公は、高校に入学したばかりの
鈴木杏演じる荒井「花」 と 蒼井優演じる「有栖」川徹子。
高校に入る直前のたぶん春休み。
ふたりで出かけて、他愛のないことにもメチャクチャ楽しそうなハナとアリス。
高校の入学式の朝、
見慣れない高校の制服に身を包んだお互いを見て、はしゃぐ二人。
ああ懐かしいこの感じ。
でも、自分のことを振り返ってよくよく考えてみると、高校卒業後、何年も経ったいま、
お母さんになった高校時代の友達と会って他愛もない話で盛り上がる感じも、
まったくあの頃とおんなじ…。
その人の基本形というのは、
このハナやアリスくらいの年代にできているものなのかもしれない…とふと思います。
性格とか物事への対処の仕方とか自分の表し方だとか…。
でも、30代を迎えお母さんをしている友達と16歳の頃の彼女とを比べると、
明らかに経験と成長の跡が見られる。
もちろん、彼女は彼女のままなのだけれど。
「大人」という言葉は、具体的な何かを示すものではなく、
ひとりの人間のその「変化」を表すために生まれた言葉なのではないかな?と
この映画を見ながら思いました。
いくつからが「大人」かなんて、まったくもってわからないもの。
高校生の頃は、大人になると、どうなるのだろう…とか、
いくつから、大人にならなくてはならないのだろう…とか、
大人になるためには、何かを諦めなくてはいけないのだろうか…とか、
まさに、よく遣われる言葉どおり、期待と、
それより遥かに大きな不安や焦りがあったような気がするのですが、
基本的には、いまのままの自分が成長していく、
それは、いくつになっても、大人と呼ばれる年齢になっても、
そういうことなのだよなぁと、あらためて、思わされます。
この映画を見ていて、そんな風に感じたのは、きっと
この作品が、青春のノスタルジックな思い出を単に「美化」して描いているのではなく、
主人公のふたりの年代をとうに過ぎた人たちにとってもリアルな
友達とか恋とか日常の中でのきらめく痛みを、その時の匂いごと、描いているから。
ハナにしても、アリスにしても、
男性監督が描いた女の子なのだけれど、女の子から見てもすごくリアルなのです。
こういう子、周りにいる、という圧倒的なリアリティがある。
そして、そんな彼女たちやその周りの人たちを見つめる視線がやわらかでやさしい。
季節の変化をいとおしむ目線が、心地いい。
そのぜんぶが包み込まれて、岩井俊二ワールドになっている気がします。
日々、「すべきこと」に追われていた私は、
なんだか、やさしいきもちに包まれて胸がいっぱいになってしまいました。
17歳の頃も、30歳になっても、きっともっとお婆さんと呼ばれる年齢になっても、
こうして、こうやっていまと同じように物事を考えて受け止めて生きていくのだな…と
小さくて、たしかな希望が生まれるような、そんな映画でした。
公式サイト: http://www.hana-alice.com
ケータイ・サイトはココに空メールhana-alice@mead.jp
今週末13日より全国東宝洋画系で公開。