2004-01-22 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
ある世代から上の人たちには、実によく知られたこの作品。高校生の皆さんには、いかがでしょうか?今日、ご紹介するのはリチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ主演の『プリティ・ウーマン』(1990)です。
舞台は、ビバリーヒルズ。ある夜、実業家のエドワードは道を尋ねるため、道端に立っている娼婦のヴィヴィアンに声をかけます。自分の泊まるホテルまでの道案内にヴィヴィアンを車に乗せたエドワード。彼女を単なる娼婦と思っていた彼は、ヴィヴィアンが車に詳しいことに驚きます。ついには自分が旨く操れない、乗りなれない車の運転までを彼女に任せることに。ヴィヴィアンの意外性に興味ひかれたエドワードは、1時間の契約で彼女をホテルの部屋に迎えます。次第に彼女の「人間性」に興味を持っていくエドワード。1時間のはずだった契約は、やがて一晩に、そして1週間へと引き延ばされていきます。そんなふたりの1週間を描いたのが、この映画なのです。
娼婦だったヴィヴィアンが、裕福な実業家と1週間を過ごすことになり、カクテルドレスに身を包み、テーブルマナーを身につけ変身していく…オードリー・ヘプバーン主演の『マイ・フェア・レディ』的な彼女の変身ぶりも、この映画の楽しみのひとつ。ロデオドライヴで買い物を済ませた彼女の前に、花柄の傘がふわりと重なるショットなんて、女の人の心をくすぐる華やかさです。女の人が、ある男性と出会い変身していく…シンデレラ・ストーリーとしての面白さも、この映画の魅力のひとつ。
でも、この映画を単なるシンデレラ・ストーリーにさせていないのが、ヴィヴィアンのキャラクター。とにかく正直で、人の気持ちに敏感。そして、人に甘えないプロ根性の女性。彼女が意外な魅力を発揮していくひとつひとつのエピソードは楽しく、そして気持ちがいい。ヴィヴィアンの立場から見れば、この物語はシンデレラ・ストーリーかもしれないけれど、そのシンデレラ・ストーリーは彼女自身の心のありようが招いたもの。そして、エドワードの立場から見れば、この物語は、実の父親を憎み、冷酷な仕事ぶりで仕事一辺倒だったエドワードが、天真爛漫なヴィヴィアンと出会ったことで、人を、そして自分自身を愛する気持ちを取り戻していく物語ともいえる…この深みが、この映画が男女年代問わず楽しまれている理由なのではないでしょうか。
わたしが好きなのは、ふたりがオペラ鑑賞に出かける場面。幕が開く前、エドワードはヴィヴィアンにオペラ鑑賞に関するウンチクを語ります。心より論理が先行する、ちょっと頭でっかちなエドワードに対して、オペラを見終わったあとのヴィヴィアンの表情は…。
ヴィヴィアンの純粋な心が、見ている人を元気にしてくれる素敵な作品です。
また、この映画で忘れてはならないのが、ふたりが滞在するホテルの心ある支配人を演じているヘクター・エリゾンド。彼の存在も、この映画に一役買っています。リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツがふたたびコンビを組み、『プリティ・ウーマン』のゲーリー・マーシャルが監督を務めた映画『プリティ・ブライド』(1999)にも、主演のふたりとともに出演しています。