2004-01-08 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
近頃は、おしゃれなカフェや女の人向けの洋服屋さんに男の店員さんがいることがごく自然なことになったような気がするのですが、実はこれ、ここ数年の大きな変化だという気がします。数年前までは、もっと「男だから」「女だから」できること・できないこと・やらなくてはいけないことが、「義務」として認識されていた気がするのです。たとえば、家事は女の人がやるべきだ…とか。最近は、性別よりもその人自身の個性が尊重されるようになってきた、そんな流れを感じます。
『アベック・モン・マリ』は、ちょっと危なっかしい二組の夫婦の人間模様を、その4人を交錯させて描いた作品です。物語の軸になるのが、出版社で働くしっかり者の女性・美都子とフリー・カメラマンのタモツの夫婦。タモツはフリーになったものの殆んど仕事がなく、美都子が養っているのが現実。タモツに浮気の疑いが生まれたことから、怒った美都子は離婚しようと言い出し、タモツを家から追い出してしまいます。家を出されたタモツはアパートを見つけるまでの約束で疑惑の相手・モデルのマユの家に居候。単なる友達といいつつも、危うげな関係のタモツとマユ。そして、美都子はアート・ディレクターの中崎と仕事をしており、中崎とマユは23歳も歳の離れた夫婦……タモツとマユはどんな関係なの?中崎とマユは一体どんな夫婦なの?そして、タモツと美都子はどうなるの?あらゆる疑問は、物語後半に明らかになります。この物語を展開させていくのが、とにかく自然な会話劇。シチュエーションだけを決めて、役者さんたちに好きに話してもらったのではないかと思うくらいに自然な会話。ほとんどドキュメンタリーではないかと思うほど。まるで他のカップルの日常を見ているようで、ものすごくリアルです。この作品が製作された1998年当時は、こういう形の映画がすごく画期的で新鮮だったように思います。その後、TV番組『あいのり』のような他の人の恋愛を取り上げる番組も増えましたが。
話を物語に戻しますが、タモツ。タモツです。映画の冒頭では、本当に情けない男の人に見えていたのですが、話が展開していくうちに「なんだ、男らしいじゃん」と思えてくる。仕事はテキパキとこなすのに、こと恋愛となると不器用で頑固者の美都子。そんな美都子の弱い部分をタモツはちゃんとわかっているのです。女の人が男の人に求める「男らしさ」は、決してマッチョな「俺について来い」ではない…いまを生きる私たちにとって自然な男と女の形が、浮かび上がってきます。ヒュー・グラント、サンドラ・ブロック主演の映画『トゥー・ウィークス・ノーティス』(2002)や大ヒットした韓国映画『猟奇的な彼女』(2001)も、同じような男女の形を描いています。3作品とも、笑えてホロっときて、見終わったあと、あたたかい気持ちになる作品です。
4人の登場人物が、実在の人たちのように活き活きとそこで生きている『アベック・モン・マリ』。会話の面白さ、後半なんて思わず吹き出してしまうほど。10組のカップルがいれば、10通りの恋愛模様がある…。あなたのしあわせは、どんな形ですか?