2003-12-25 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
いよいよ冬休み。そして今日はクリスマス。ということで、華やかな作品をご紹介したいな…と考えて、思いつきました。バズ・ラーマン。この名前を聞いてピンと来なくても、この人が監督をつとめた作品のタイトルを聞けば、「ああ」と思う人も多いかもしれません。『ダンシング・ヒーロー』やレオナルド・ディカプリオが主演した『ロミオ&ジュリエット』、パリのナイトクラブを舞台にした煌びやかなミュージカル『ムーラン・ルージュ』を手がけたオーストラリア出身の監督です。この3作品を見たことがある人ならば、この監督独特のキラキラとした華やかな世界が思い浮かぶのではないでしょうか。
『ダンシング・ヒーロー』(1992)は、社交ダンスにすべてを賭ける青年を描いた爽快な娯楽作。バズ・ラーマンの映画監督デビュー作です。青年が挫折や恋を知ることで、人生に目覚め、そして踊ることに真に目覚めていく過程をわくわくするようなスピード感で描いています。とてもシンプルな映画だけれど、まっすぐでパワフル。わかりやすくて、ワクワクする。バズ・ラーマン映画の特長は、すでにデビュー作で発揮されています。
『ロミオ&ジュリエット』(1996)は、何度も映画化されているシェークスピアの古典劇をバズ・ラーマンが映画化した作品。主演は、レオナルド・ディカプリオ、そしてクレア・デーンズ。本作では、原作の設定を現代に置き換えて再現。作品の雰囲気も音楽も何もかもが斬新。レオナルド・ディカプリオはアロハシャツでロミオを演じています。でも、斬新さだけが浮き上がらないのは、この作品が原作で描かれているロミオとジュリエットのピュアで向こう見ずな恋を、胸が熱くなるほどの切なさで大切に描いているから。ロミオとジュリエットのラブ・シーン、美しいです。
『ムーラン・ルージュ』(2001)は、二コール・キッドマン、ユアン・マクレガー主演のミュージカル映画。時は、1899年のパリ。夜な夜な華やかなショウが繰り広げられるナイトクラブ、ムーラン・ルージュを舞台に、そのクラブのスターである高級娼婦の女性と貧乏な作家の青年の切ない恋を描いた物語です。20世紀初頭のパリが舞台でありながら、主演のふたりが歌ってゆく数々のナンバーは、20世紀を彩るヒット曲の数々。ビートルズにエルトン・ジョン、スティング、マドンナ、デヴィッド・ボウイ…。この曲、聴いたことある!というヒット・ナンバーの洪水とともに目の前に現れるのは、きらびやかなナイトクラブの世界。玉手箱のような楽しさです。
20世紀初頭のパリを舞台にしながらも、流れる曲は、いまを生きる私たちに馴染みの深いヒット曲。この感覚も、バズ・ラーマン。とてもポップなのです。いまを生きる私たちがリアルに面白いと思える感覚を大切に作品が作られている。だから、彼の作品は、舞台が少し前の時代であろうと、古典劇であろうと、生き生きと観客の心を躍らせてしまう。それは、バズ・ラーマン自身が、いまを生きる自分の感覚を大切に映像世界を描いているからではないでしょうか。
そして、この3作品のどの作品にも共通する点は、切ない恋心が描かれているところ。誰かを好きになったときのせつなさ…そんなきもちの高まりが映像に凝縮されたようなバズ・ラーマンの映像世界。冬休みに体験してみませんか?