2003-12-04 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
大学生活って、こんな感じ。
この映画を観ていて、そう思いました。自由で気まま。大学生活って、あたりまえだけれど、学内だけの出来事じゃない。大学の近所でよく見かける猫の親子とか、通学途中にいつもすれ違う妙に気になる変な人とか、バイト先の人間関係とか。その全部をひっくるめて大学生活なのだけれど、その自由気儘さがおおらかにスクリーンに表れていて、なんだか懐かしい気がしました。

『ジョゼと虎と魚たち』より
今日、ご紹介する映画は、13日から公開になる『ジョゼと虎と魚たち』。主演は、妻夫木聡と池脇千鶴。妻夫木聡演じる主人公の大学生・恒夫は雀荘でバイトする大学生。ある日、彼は乳母車に入りお婆さんに引かれている不思議な少女と出会います。彼女の名前はジョゼ。彼女に興味をもった恒夫は、たびたびジョゼとお婆さんの住む家を訪れ、ご飯を食べさせてもらうようになります。
ジョゼは足が悪く、近所の人にそれを知られたくない彼女のお婆さんは、日が沈み暗くなってから、しかも毛布をかけた乳母車での外出しか彼女に許しません。外の世界を知らないジョゼのもとに初めて現れた「外の世界」=恒夫。ふたりの不思議であたたかな日常が始まります。
原作は田辺聖子の同名小説。映画があんまり良かったので原作を読んでみたら、また映画とはひと味違う印象。この映画は犬童一心監督が、恒夫とジョゼの間に描かれた原作の大切なエッセンスを汲み取り、それを犬童監督が見ている世の中に取り込んで再構築した作品なのだと感じました。この監督は大島弓子原作の『金髪の草原』を映画化した監督でもありますが、この作品でもやはり原作の解釈と監督の解釈が少し違うのが印象的でした。田辺聖子さんの小説も、大島弓子さんの漫画も女の子として共感できる、とても大切な物語なのだけれど、それを犬童監督が捉えて再構築するとこうなるのか…そこに犬童ワールドを見ることができます。女の子の夢の世界に、男の人の客観性が加わった現実感とでもいいましょうか。
そして、そんな犬童ワールドを今回さらに加速させているのが、「くるり」の音楽。くるりの音楽がもつ、聴く人の心にそっと届くプライベートな感じが、恒夫とジョゼの日常にぴったりで、心の奥底にじんわりと響きます。とてもたいせつな映画です。(13日より渋谷シネ・クイントにて公開)。
『ジョゼと虎と魚たち』公式サイト:www.jozeetora.com/