2012-01-26 号
多賀谷 浩子(フリーランス・ライター)
どこにも行き場のない、殺風景な地方都市。
果ての見えない、どこまでも伸びる国道沿い。
映画がはじまると、映し出されるのは二人の若い男。
カメラは男たちの背中を追いかける。
何の説明もなく、二人は歩いていく。
やってきては走りゆく、トラックの轟音だけが耳に残る。
そのうち、二人の後ろ姿に大きな変化が起こる。
裏口に鍵をかけていた商業施設の従業員に、二人が襲いかかったのだ。
その男性を羽交い絞めにし、建物へと押し入る二人――

(c)ジャンゴフィルム、真利子哲也
強盗に押し入った二人の場面は、
わたしたちがそれとわかった時点ですっと姿を消す。
そして映し出されるのは、二人のうちの一人。
ゆらゆらと国道沿いを歩き、盗んだ車で行く宛てのないドライブに出る。
映画は轟音で上映され、
この若い男を取り囲む寂れた街のノイズが、男の心の孤独を映し出す。
やがて日が暮れ始め、あたりは夕闇に包まれる。
カメラは、ピンをぼかした映像で、
運転席に座る男の後ろ姿越しに、夕闇を映し出す。
この場面の、孤独。もう言葉にならない。
ほとんど痛みといってもいいかもしれない。
国道沿いのノイズや、誰もいない土地・・・
言葉以外のものが、痛切に男の孤独を伝える。
そこにもっとも追い打ちをかけるのが、
この男を演じる宮﨑将の表情と、そのたたずまい。
ワンショットで撮られた各場面に、生きた感情の機微が滲む。
とてもさり気なく、けれど何ともいえない肌触りで。

(c)ジャンゴフィルム、真利子哲也
この映画の主人公が体現するのは、
まぎれもなく私たちが生きている世界の一片。
今の時代の孤独が、
あふれるような緊迫感で伝わってくる。
たとえば、人身事故で電車が止まった時に、
大勢の乗客たちが誰も事故に心を向けることなく、
自分たちの都合を気にする、今の時代の無関心の怖さ。
そんな「今」が凝縮された、42分の中編映画。
監督は東京芸大の映画大学院の修了制作として撮られた
『イエローキッド』(07)が劇場公開され、注目された真利子哲也。
タイトルの「NINIFUNI」は造語ではなく、
仏教の「而二不二」のこと。
さまざまな二つの対照が、男の孤独に深い陰影をもたらす。
そんな対照のひとつとして登場するのが、
アイドルグループ「ももいろクローバーZ」。
海辺でPV撮影する彼女たちを
車内から撮影している、ある場面が忘れられない。

(c)ジャンゴフィルム、真利子哲也
シンプルだからこそ、胸を打つ。
余計な力の入っていない演出が美しく、
研ぎ澄まされた孤独が、痛い。
2月4日より公開。
公式サイト:http://ninifuni.net/