1951年広島生まれ。81年「さようなら、ギャングたち」が群像新人長篇小説賞優秀作 に。 88年『優雅で感傷的な日本野球』(河出書房新社)で第一回三島由紀夫賞を、 2002年『日本文学盛衰史』(講談社)で伊藤整文学賞を受賞。
2011-06-05 号
高橋 源一郎(作家)
いま、ぼくの長男は6歳(来月、7歳)で小学校一年生、次男は5歳で、保育園の年長さんだ。ふたりがはまっているものがある。一つは、「バトルスピリッツ」というカードゲーム。もう一つは、「仮面ライダー・オーズ」。どちらも、テレビで(「バトスピ」はアニメ、「オーズ」は実写)放映中。どちらかがテレビで始まると、ふたりは食い入るように見ている。それは、まあいいとしよう(ちょっと、それも問題はあるのだが。だから、我が家では、極力、テレビ観覧時間を制限している)。困るのは、というか、いささか疑問に感じるのは、その「バトスピ」と「オーズ」の関連商品なのである。
「バトルスピリッツ」はカードゲームなので(詳細は省く)、たくさんのカードを使う。強いカード、弱いカード、たくさんあるわけで、当然のことながら、強いカードをたくさん持っている方が対戦で勝っちゃうわけである。だから、子どもとしては、強いカードが欲しい。トランプなら、カードの数は決まっている。だから、最初に一式、カードを買えばお終い。でも、この「バトスピ」、どんどん強いカードが生まれてくる。だから、いくらでも買わなきゃならない。しかも、高い! もともと高い上に、生産終了品やレアものは、高騰する。この前、おばあちゃまが、カードが欲しいというので、子どもと一緒にオモチャ屋や行き、カードが並んだファイルを見せられて、「2500円」というので、このファイル一冊でその値段かと思ったら、1枚(!)で、2500円なので、びっくりしたそうだ。ぼくだってびっくりする。ちなみに、いまAMAZONで検索したら、月光龍ストライク・ジークヴルムは3200円……。もっと高いのもあるそうだ。それを買ってほしいと、長男は真剣におねだりしている。次男もだ。それって、おかしいと思うんだが。みなさん、どう思われるだろうか。「仮面ライダー・オーズ」でも、変身のために、たくさんの種類のメダルがあって(なんで、変身するために、そんなにたくさんの異なった種類のメダルの必要があるのかわからない)、そのメダルというのが、「バトスピ」のカードと一緒で、高いのである。ただのメダルなのに! うまい商売だと思う。これは、どう考えても、最初から商品を売るために物語を考えたとしか思えない。少なくとも、途中からは、商品開発部と物語制作部(?)は、共同で作業をしたのだろう。親はねだられと、イヤとはなかなかいえない。でも、これって、かなりあこぎな商売だと思います。はっきりいって。